「AIはすぐ進化するから飛びつくのはリスク」 それを超えるメリットとマイナスの消し方CIO Dive

生成AIの進化は早く、すぐに新しい最新のモデルが登場する。素早く導入に動く場合は投資リスクがあるが、それでも得られるメリットは大きい。リスクを極力減らして新しい技術を活用する方法もある。

» 2024年04月24日 08時00分 公開
[Lindsey WilkinsonCIO Dive]

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CIO Dive

 企業が生成AIの導入を進めるに当たり、CIO(最高情報責任者)は現在利用可能な最新モデルもすぐに時代遅れになることを認識しておく必要がある。

AI企業がこぞって新製品をリリース 現行モデルは1年で時代遅れに

 2024年3月13日(現地時間)に発表されたGartnerの調査によると、カスタマイズされたLLM(大規模言語モデル)を構築した企業の半数以上が、コストや複雑性、技術的負債などを原因として2028年までにその取り組みを断念するという(注1)。

 Gartnerのリタ・サラム氏(VPアナリスト)は、「迅速に行動する企業にとって、技術的負債が発生する可能性は非常に高い」と述べている。低コストで高精度な新しい技術やモデルはほぼ毎日登場している。

 技術的負債の可能性は高まるが、ベンダーのソリューションに依存している企業であっても、機敏であることを優先すべきだ。

 「チームが現在のモデルを使ってアプリケーションを構築する際、CIOは新しいモデルが出てきたときに素早くAPIを更新できるようなアーキテクチャを選ばなければならない」(サラム氏)

 OpenAIは「GPT-3.5」で企業向け生成AIチャットのパイオニアとなり、それから半年も経たないうちに、次のモデルである「GPT-4」を発表した。2024年1月には、同社はアップデートされた「GPT-4 Turbo」モデルをプレビューしており(注2)、さらに現在は次のイテレーションである「Q*」(Qスター)に取り組んでいると報じられている。

 次のモデルのリリースに向けて急ピッチで動いているプロバイダーはOpenAIだけではない。AIスタートアップ企業のAnthropicは、2023年3月に初代モデルセットを搭載した生成AIチャットbot「Claude」を展開した(注3)。同社は2024年3月にリリースした「Claude 3」で第3世代のモデルセットに着手している(注4)。

 Salesforceのマーク・ベニオフ氏(CEO)は、2024年2月に行われた同社の決算説明会で、「すでに数千のモデルが存在しているが、今後数万、数十万のモデルが登場する(注5)。現在利用可能なモデルは全て、1年後には時代遅れになっているだろう」と述べた。

重要なのはAI目標とリスク許容度のバランス

 技術的負債という考え方にCIOは反発するかもしれないが、LLMを構築するための初期の努力は無駄ではない。

 「迅速に行動する企業は、AIによって成し遂げたいことを支えるためのスキルアップの取り組みや熟練した人材の獲得において優位に立てる。動きが速いとその過程で技術的負債が増えるのは間違いないが、それは必ずしも悪いことではない。もしAIで実現したいことが業界を変革することであれば、技術的負債は他の戦略的な利益をもたらすオプションに投資するためのコストと見なすことができる」(サラム氏)

 早期参入企業は技術的負債を抱えるリスクがあるが、生成AIの取り組みはその分野でも役立つ可能性がある。企業は生成AIツールを使ってレガシーアプリの適切な代替品を作成し、2027年までにモダナイゼーションコストを70%削減すると予測している。

 「生成AIの技術的負債は、特に変更が必要なことを承知の上で設計している場合、以前よりも深刻な問題ではなくなる可能性がある」(サラム氏)

 高度に規制された業界であっても、技術的負債が減少するという見通しはレガシーコードを大量に抱える企業にとって魅力的だ。銀行は生成AIが、COBOLに費やす時間からエンジニアを解放してくれることを期待している(注6)。

 ベンダーはこのミッションに喜んで協力し、レガシーコードを対象としたツールをリリースしている。IBMの「IBM watsonx」はCOBOLをJavaに変換できる(注7)。AccentureはGPT-4とベクトルデータベースを使用したツールを作成し、COBOLの技術的および機能的なドキュメントで開発者を支援してモダナイゼーションを加速させた。

 組織のAI目標とリスク許容度のバランスを取ることが、次のステップの指針になるとサラム氏は言う。ベンダーのソリューションによるコーディングやコンテンツ生成、生産性向上を目的としたAIの活用は調達と導入が比較的容易で、企業にとって技術的負債を抱えるリスクが低い。

 しかし、そこには落とし穴がある。

 「もし競争上の優位性があるとしても、その利点はまず長続きしないだろう」(サラム氏)

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