また同社は、エンタープライズ向けだけでなく宅内向けの展開も視野に入れており、NECグループと同様、通信事業者向けにVoIP(Voice over IP)内蔵PLCモデムや、トリプルプレイ対応PLC内蔵ブロードバンドルータなども製造している。こちらはノイズに強いHPA(HomePlug Powerline Alliance)仕様に基づくもの。宅内向けの販売は子会社の住友電工ネットワークスが担当し、エンタープライズ向けのインテグレーションは住友電工および住友商事マシネックスが担当する。
同社の高速PLCモデム「PAU2210/PTE1310」は、規模の大きな場所でも適用できる点や、QoS機能、VLAN(仮想LAN)、SNMP(Simple Network Management Protocol)プロトコルによるネットワーク監視などが特徴だ。また、マルチアクセスにマスター/スレーブ方式を採用している。
ビル全体や集合住宅などでPLCを適用する場合は、帯域をシェアすることになるため、個々のサービスの実効速度は数Mbps程度になる。このPAU2210/PTE1310には、マスター専用のHeadEnd(HE)とスレーブ専用の子機(CPE)の2種類があり、マスター側がスレーブ側にデータ送信のタイミングや時間などを制御する方式を採用している。小規模であればCPEのみで31台まで接続できるが、さらに大規模な環境ではHEを用いたり、中継用リピータを利用することによって991台まで拡張できるようになるという(図2)。
例えば、集合住宅での導入イメージは図3のようになる。フロアごとにリピータを配し、それぞれの部屋にCPEを置く形だ。また、このケースではHEを分電盤に接続している。「分電盤にHEを直接つなげているのは、よりパフォーマンスが出る場合があるため。また3相のうち、どの相につなげるかを選べるメリットもある」(弘津氏)。
国内のエンタープライズ向け高速PLCのマーケットに対しては、各社ともこれから模索していく部分が大きい。競合メーカーと切磋琢磨しながらノウハウを積み、PLCの最大のメリットである利便性を訴求していかなければ、企業向けPLCインテグレーションのすそ野は広がっていかないだろう。前出の住友電工の弘津氏は、「今後は動画を送信するというニーズが出てくる。その際は、安定して送れるという点で無線より有線の方が有利だろう。動画サービスと結び付いて、PLCが一定の地位を得られるかもしれない」と期待を寄せる。
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