成功それとも時期尚早? 企業向けPLCベンダーの挑戦「エンタープライズPLC」のススメ(2/3 ページ)

» 2007年02月14日 08時00分 公開
[井上猛雄,ITmedia]

 同社では、エンタープライズへのPLC導入に対し、部分的な適用を主として考えているようだ。企業のオフィスフロアはLAN化されていても、応接室や会議室など、まだネットワーク化されていない場所は多い。また一般オフィスの環境でも、レイアウト変更が頻繁に行われたり、1つのビルあるいはフロアに別会社、複数の組織が混在することもあり得る。「最近では個人情報保護や内部統制の観点からネットワークをセグメントに分けることが求められているが、VLAN(仮想LAN)を組むのが大変なケースもある。既存LANと別にアドホック的に電力線だけでネットワークを組めれば、完全にネットワークをアイソレートできる」(同事業部PLC推進センターの礒江靖仁氏)。

画像 NEC エネルギーソリューション事業部 PLC推進センター マネージャーの磯江靖仁氏

 また、さまざまな制約でケーブルが敷けない工場やホテルなどもターゲットの1つになるという。NECネッツエスアイは企業ネットワークの構築を手掛けているため、そのノウハウをベースに総合的なネットワークインテグレーションを行っていく。同社ではPLC関連ビジネスを5年間で200億円規模にまで成長させたい考え。

 本林氏は「単にPLC機器を売るのではなく、PLCのテクノロジーを提案することで、企業ネットワークに提供するチャンスが増えていくと考えている。今後はPLCモデムが少なからず機器に組み込まれていくはず。M2M(Machine-to-Machine)によるセンサーネットワークなども含め、一歩先にある組み込み用途なども想定する。さらにエンタープライズ向けの関連ビジネスや、今までになかったマーケットも視野に入れていきたい」と話す。

図1 図1●企業内のメディアとして、音声(IP電話)、データ(電子メール、インターネット、Webサービス)、映像(Web会議、コンテンツ配信、監視カメラ)という3つのサービスを、有線LAN、無線LAN、PLCの通信技術を組み合わせることによってワンストップで実現するという仕組み

 また、NECネッツエスアイではエンタープライズ向けシステムインテグレーション事業において、「トリプルプレイ×トリプルワイヤリング(3×3)」というコンセプトを掲げている。これは、有線LAN、無線LANに加え、PLCを第3のワイヤリング技術と位置付け、それぞれの技術を活用してQoS(サービス品質)、セキュリティ(認証など)を加味したネットワークを提供し、トリプルプレイ(音声、映像、データ)のシステムをワンストップでサポートするというもの。具体的な事例ではないが、構築イメージは図1のようになるという。

ビル内や集合住宅への全体適用というアプローチ

 住友電気工業もエンタープライズへの展開に力を入れている1社だ。同社では1998年から高速PLCの開発に着手しており、エンタープライズ向けのPLCにおいて、国内で最もノウハウを持つベンダーと言っていい。2004年には、200MbpsのDS2搭載PLCモデムを初めて開発した。海外での実績も豊富で、ポルトガル、ロシア、マレーシア、オーストラリアなどにおいて、実証実験や商用サービスの構築も手掛けている(海外の事例については別の記事で紹介する予定である)。

画像 住友電気工業 ブロードバンド・ソリューション事業本部 PLC開発部主幹の弘津研一氏

 同社では、PLCをオフィスの一部に導入する手法だけでなく、アクセスライン(ただし国内では屋外での利用は認められていない)や、集合住宅、ビル全体への適用など、大規模な構築のノウハウを蓄積している。「オフィスビル内、ビル/工場/店舗でのセキュリティカメラ、ホテルやアパートの各部屋、店舗ビルのPOS端末用などにおいて、PLCでネットワークを構築していく方向」(ブロードバンド・ソリューション事業本部 PLC開発部主幹、弘津研一氏)だという。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ