「ネットワークはより戦略的になる」――“2番手”HPがスイッチで攻勢へ

ヒューレット・パッカード(HP)は、他事業に比較するとあまり目立たないが、「ProCurve」というブランドの下、ネットワーク機器関連事業を展開している。LANスイッチの売り上げで急成長を遂げたHPが、新しいビジョンとともに次の一手を繰り出す。

» 2007年02月16日 08時00分 公開
[堀見誠司,ITmedia]

 「ProCurveは業界の類似製品に比べてコストパフォーマンスが高い。さらに、インテリジェンスをエッジネットワークに持たせることで拡張が容易になる」――米Hewlett Packard(HP)でProCurveのワールドワイド・プロダクト・マネジャーを務めるケヴィン・ポーター氏は、同社製LANスイッチ群のブランド「ProCurve」の強みをこのように説明する。2006年第3四半期のLANスイッチ機器の売り上げ、出荷ポート数でシスコシステムズに次ぐ「業界第2位」のポジションを得た同社は、価格性能比とLANポートの機能拡張性で勝負するという。

画像 セキュリティソリューションマネジャーも務め、TCGにも参加する米HPのポーター氏。「標準化団体に参加して、実際にビジネスニーズに合ったものが標準化されるよう働きかける」と話す

 HPは、ProCurveブランドのLAN関連機器で実現する新しいビジョンとして、「Adaptive Networks」を掲げている。Adaptive Networksでは、コアネットワークではなくエッジネットワーク側にあるLANスイッチにトラフィック管理やセキュリティ防御をつかさどるインテリジェントな機能を集めるべきという、従来の考え方を一歩進めた。ネットワークを介して生産性向上やさまざまなビジネスへの適応を図り、ネットワークインフラを企業資産としてより戦略的に使うための仕組みを用意していく構想だ。

 「キーワードは『ユーザー』『アプリケーション』そして『仕事のニーズ』。例えば、オフィス網へのアクセスが自宅あるいはネットカフェからでも、ユーザーに合わせた接続形態・予約帯域で会議を招集し、IP電話を利用するならVoIP(Voice over IP)トラフィックを最優先して、かつ通話に必要な品質も確保する。さらに、共同作業で1つのポートを複数人で共有する場合も、各ユーザーがそれぞれにアクセス許可されたデータのみを閲覧できる。こうしたことを、エッジのLANポートを機能拡張して実現していく」(ポーター氏)

 「ProCurve Switch」シリーズでは、必要に応じてポートにあとから機能を追加できる仕組みになっている。同社では、ファームウェア更新による機能拡張は無償で行う考え。

自社設計と標準技術にこだわる

 またHPは、自社でASIC(特定用途向けカスタムチップ)を設計し、スイッチの上位機種に搭載している。だが現在、プロセッサの処理能力やメモリ容量がフル活用されているわけではなく、IPv6やより細かなアクセスコントロールに対応できるよう、5年後までのニーズを見越して余力を残してあるという。

画像 カスタムIC「ProVision ASIC」を搭載するProCurve Switch 3500yl-24G

 今後の機能強化として、「Proactive Defence」という包括的なセキュリティ機能を実装するプランもある。ポートが一種のセンサーの役割を果たし、ウイルスによるトラフィック異常やネットワーク上の不正な振る舞いを検知して、影響を与える原因となるポートを遮断するといった制御を自動的に行える仕組みだ。すでにProCurve Switchでは、ウイルススロットルというポートレベルでのウイルス検知機能を装備しているが、これをさらに強化したものと考えられる。

 その一方で、「標準規格のサポートも重要視する」とポーター氏。自らがかかわる検疫ネットワークシステムの標準化を目指す業界団体TCG(Trusted Computing Group)が提唱する仕様「TNC(Trusted Network Connect)」について、そこで定義されるIEEE 802.1Xベースのポリシー管理機能を、ProCurveで業界に先駆けて実装した。マイクロソフトの「NAP(Network Access Protection)」もサポートする予定。ただし、シスコの「NAC(Network Admission Control)」については、「ソフトウェアベンダーに対してはオープンな仕様だが、ネットワーク機器ベンダーにとっては標準的な位置付けではない」としている。

 ポーター氏によると、企業における検疫ネットワークの導入率は現在たったの4%だという。ただし、今後1年以内に36%にまで拡大するだろうとの見通しを示した。

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