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» 2007年02月28日 08時00分 公開

PLC電磁波漏えい問題で聞こえる「慎重派」の声「エンタープライズPLC」のススメ(1/3 ページ)

PLCの普及促進で最も大きい障壁となり得るのが、電力線から漏れ出る電磁波の問題。ルール(法規制)にのっとってクリアしたはずの問題の火種は、まだくすぶっているようだ。

[井上猛雄,ITmedia]

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PLC解禁までの「紆余曲折」

 高速PLCは2006年10月に解禁されたが、ここへたどり着くまでにさまざまな紆余曲折があったのはご存じだろうか。読者にもPLCの問題を認識していただく上で、まず高速PLC解禁までの道のりについて振り返ってみる。

 低速PLCは1990年代後半には実用化され、主に産業分野での機器制御を中心として利用されていた。当時のPLCの速度は9600bpsほどであったが、主な用途は工場の機器や空調、照明などをコントロールするだけだったため、この速度でも事足りていた。ところが、インターネットの普及やリッチメディアの登場により、より速い通信が求められるようになってきた。

 PLCで高速通信を実現するためには、高周波で信号を流す必要がある。しかし、当時は電波法の規制によって、国内において高速PLCを実現するのは難しい状況だった。

 1999年になって、米国政府からの規制緩和を受け、電波法施行規則の一部が見直された。「特別搬送式デジタル伝送装置の型式指定」に位相変調方式が追加され、ここで初めてPLCの高速化への門戸が開かれることになったのだ。そして2001年には、e-Japan重点計画において「電力線搬送通信設備に使用する周波数帯域の拡大の検討」が提言された。すでに欧州では高速PLC(当時は45Mbps)によるブロードバンドの実証実験も始まっており、2002年には国内でも高速PLC実用化への気運が高まった。総務省は「電力線搬送通信設備に関する研究会」を設置し、短波帯利用の具体的な検討に入った。

図1 図1●日本国内の周波数の割り当て(短波帯)。図のように短波帯には多数の無線設備が存在している

 そこで、2M〜30MHzの短波帯を使うことが検討され、海外の高速PLC製品を用いた実証実験が始まったのだが、予想以上に大きな電磁波の漏えいが確認され、短波帯を利用している既存の無線通信への影響が懸念された。この周波数帯には船舶・航空機通信、短波放送、アマチュア無線、天文観測などの周波数が割り当てられている(図1)。当然、関係者から反対の声が上がった。

 そのため、総務省は「まず漏えい電磁波の低減が必要」との判断を下し、電波法関連の規制緩和も見送りとなった。ただし、研究会の報告では「今後漏えい電磁波を低減する技術改良が期待されることから、研究開発を継続することが必要」とし、技術開発のための実験局制度の提言も盛り込まれた。

 一度は頓挫したかのように見えた高速PLCの実用化の動きだが、2003年にPLC推進ベンダーが中心となって、第二次規制緩和に向けた「高速電力線通信推進協議会(PLC-J)」を設立し、新たな活動が始まった。

 2004年には、総務省が「実験用高速電力線搬送通信設備の設置許可に係る方針の決定」を発表し、実験目的に限って短波帯の利用が許可されることになった。e-Japan重点計画2004では「無線通信や放送などへの影響について、実用上の問題がないことが確保されたものについて活用を推進する」との提言もあり、PLC推進ベンダーは漏えい電磁波の低減とともに、通信速度の高速化に取り組み始めた。そして、翌年には「高速電力線搬送通信に関する研究会」が発足し、12回にもわたりPLCに対する推進派と慎重派の議論が重ねられていった。

 この議論では、漏えい電界の許容値や、許容値を規格化するためのパラメータの決定などが争点となったが、PLC推進派と非推進派の間で議論が紛糾。2005年末になってようやく、座長案にて研究会案がまとまり、漏えい電磁波の原因となる「コモンモード電流(詳細については後述)の値を30dBμA以下とする」という許容値を出し、実用化に向けた議論は一応の決着を見た。

 しかし、その後CISPR小委員会(情報通信審議会情報通信技術分科会CISPR委員会)での審議で、さらに厳しいコモンモード電流の許容値案に修正が加えられ、15M〜35MHz帯は20dBμA(2M〜15MHzまでは30dBμA)となった。この値はPLC推進ベンダー側にとって、相当厳しいものであったという。そして、2006年の半ばから電波監理審議会(電監審)の審議が始まり、10月4日に省令・告示改正がなされたというのが経緯である。

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