F5ネットワークスジャパンは、主力製品であるアプリケーションスイッチ「BIG-IP」のソフトウェアおよびハードウェアプラットフォームを強化した。
「今後は仮想化が進み、共有インフラの上でいろいろなアプリケーションやサービスが動く環境が普及するだろう。そうなると運用においても仮想化が必要だ」(F5ネットワークスジャパンのシニアプロダクトマーケティングマネージャ、武堂貴宏氏)――。
F5ネットワークスジャパンは2月28日、主力製品であるアプリケーションスイッチ「BIG-IP」のソフトウェアを強化した。ポイントは、仮想化されたデータセンターを想定した運用管理機能の追加だ。管理権限の分割/委譲を可能にする「管理ドメイン」機能が追加され、担当者ごと、部門ごとにアクセス可能なアプリケーションを限定できるようになった。
「Aというアプリケーションの担当者から見れば、Aというサービスは見えてもほかのサービスは見えない。管理者から見れば、いくつもの小さなBIG-IPが動いているように見える」(武堂氏)
BIG-IP v9.4では同時に、稼働状況の監視対象となるアプリケーションが拡大し、SambaやIBM WebSphereがサポートされた。また独自のスクリプト機能「iRules」をテンプレート化し、さまざまなトラフィック制御を容易に実装できるようにした。さらに、Webアプリケーションファイアウォール機能を追加するオプション「Application Security Manager」についても、ポリシー作成を自動化するツールが追加され、全体として運用効率の向上と管理コストの削減を支援するという。
F5ネットワークスは同時に、ハードウェアプラットフォームも強化した。
1つは、Web配信を高速化するモジュール「WebAccelerator」の追加だ。インテリジェント・ブラウザ・リファレンシング(IBR)という機能によってキャッシュを活用し、変更部分のみを配信することで、動的なWebページについても高速に表示できるようにした。
IBRでは、Webブラウザとの間に確立されるコネクションを通常の3倍に増やすほか、データの圧縮や最適化、キャッシュといったテクノロジを組み合わせて、配信を高速化している。それぞれのテクノロジはこれまでのBIG-IPでも提供されていたが、IBRでは配信するコンテンツのハッシュを取り、オブジェクト単位でキャッシュの利用を自動的に制御できる。管理者があらかじめ細かく設定を行わずとも、アプリケーションを高速に配信できる点が特徴という。
さらに、フラグシップモデルとなる「BIG-IP 8800」もリリースした。デュアルコアプロセッサを2個搭載しており、これまで最もハイエンドだった「BIG-IP 8400」の2倍、「同6400」に比べ3倍の処理能力を実現するという。
BIG-IP 8800ではただパフォーマンスを向上させるだけでなく、アーキテクチャも変更した。ステート(状態)情報や配信のポリシー決定、制御といった処理を共有し、複数のコアでリニアに負荷分散することにより、コア数に比例して拡張できる処理能力を実現するという。これは、年内にも発表を予定しているシャーシ型の新プラットフォームに向けた布石でもあるという。
BIG-IP v9.4は保守契約を結んでいる顧客には無償で提供される。また、WebAcceleratorの価格は300万円で、同日より販売を開始した。BIG-IP 8800は2007年夏に販売を開始する予定という。
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