そのインパクトはウェブ誕生と同じ!?新3D仮想技術は社会革命をもたらすか

大手企業が次々参入する、3DCGのオンラインコミュ二ティ「セカンドライフ」。ビジネス、ひいては社会全体に大きなインパクトを与えるものと見られている。その大きさは、ウェブ誕生の「再現」とも。

» 2007年03月02日 07時00分 公開
[富永康信(ロビンソン),アイティセレクト編集部]

ビジネスシーンも「3次元時代」へ移行か

 大手企業から熱い視線が注がれているセカンドライフが、まもなく「日本に上陸」する。リンデン・ラボが2007年初めにも、日本語サイトを用意するのだ。

 セカンドライフの可能性に早くから注目していたデジタルハリウッド大学院は、それに先駆けて校内にセカンドライフ研究所を設立。クリエイター育成のためのセミナーや、セカンドライフ内でビジネストライするための研究を行っている。島もすでに購入(2月28日の記事参照)し、情報配信やセミナーの研修用施設「デジハリランド」を建設している。

建設中のデジハリランドの全景

 「セカンドライフはだれでも参加できる世界。ただし、その中で自由に活動するためには一定のスキルやノウハウが必要」と語るのは、デジタルハリウッド大学院の教授でセカンドライフ研究室室長を務める三淵啓自氏。「日本のデザイナーやクリエイターの参加はまだ少数。今後の参加促進や日本人向け施設の整備などが、拡大のカギになる」という。

 例えば、男性はマッチョ、女性はグラマーという欧米特有のアバターデザインなどは、日本人には少々受け入れがたいものがある。とはいえ、そんな中で日本人が頑張っている例もある。これを見ると、細部にこだわる日本人クリエイターの感性がセカンドライフの中でも注目を集めることになってもおかしくはないだろう。

日本人のデザインは細部にこだわる(Petra Ash氏のブログ「Assumption of the Virgin」より)

 三淵氏は、参加の規模が拡大するにつれセカンドライフは社会的な現象になり、「3次元でのコンテンツの概念が大きく変わる」と予測する。読み書きパソコンの時代から検索エンジン使いこなしの時代を経てきたビジネスシーンも、これからは3次元空間でのインタフェース時代に移行する。それに伴い、ビジネスマンには情報の収集・発信で3Dコミュニケーション・スキルが必須になるという。

 「セカンドライフ研究室では、今後企業へのコンサルティングをはじめ、3次元空間での情報流通の可能性を研究する予定だ」(三淵氏)

すでに頻出し始めた(?)社会問題

 だが既に、セカンドライフにも影の側面が現れつつある。景観問題や住人同士のトラブルなどが増加し、仲裁業務や私設裁判所などがつくられているのだ。また、DoS攻撃が頻発するようになり、個人のし好や行動データなどの流出も懸念されている。

 さらに、リンデンドルは実際の米ドルとの交換というRMT(リアルマネートレード)が可能となっていることから、通貨量が増加するとマネーロンダリングに使われるのではないかということが懸念されている。そのほか、ばく大な収入を得る参加者が現れているため、米国の税務当局も課税を真剣に検討しているという。こうした現象は、行動心理学や社会学としても興味深い題材だ。

 今後セカンドライフのようなメタバースは、ウェブが誕生した時と同等のインパクトを世間に与えることが予想される。日本語版のスタートにより、ネット環境に恵まれた日本から、仮想空間と現実世界をつなぐ興味深いイノベーションが生まれることを期待したい(「月刊アイティセレクト」2月号のトレンドフォーカス「バーチャルな世界でもうひとつの生活を 新3D仮想技術は社会革命をもたらすか」を再編集した)。

(注1)2007年3月1日現在、日本語サイトは開設されているが、紹介とβ版の提供のみで、本サービスはまだ開始されていない。
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(注2)Metaverse:オープンソース化された3D仮想世界の総称。作家ニール・ステファンソンが自身の小説「スノウ・クラッシュ」で提起した言葉。
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※本文の内容は特に断りのない限り2006年12月現在のもの。

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