IBM、中国市場に関する調査結果を発表

» 2007年03月16日 20時10分 公開
[ITmedia]

 IBMは米国時間の3月13日、多国籍企業が中国で成功を収めるには、中国の大量消費市場により重点を置き、競争が激しくすでに市場の潜在性が成熟している一流都市から軸足を移していく戦略が必要になるという新たな調査結果を発表した。

 この調査では、「大量消費市場」を、比較的小規模で急速な成長を遂げる新興都市(福州、合肥など)を組み合わせたものとして定義している。これらの都市は、中国の都市人口のおよそ40%(2億3400万人)を占め、世帯年収が3000〜6000米ドルという、現在急成長中の消費者層となっている。

 この調査によると、これらの「新興」都市は中国のGDPの約43%を占めており、80%以上が3000〜6000米ドルの世帯年収水準に含まれている。一方、大都市の中でこのような世帯年収水準に含まれるのは50%にすぎない。また、これら新興都市のGDPも、大きな成長を見せている。例えば、新興都市の上位10都市の年成長率が28%であるのに対して、すでに繁栄している上位10都市の年成長率は18%にすぎない。

 IBM Business Value Instituteは、エコノミスト・インテリジェンス・ユニットと協力して、4つの業界(エレクトロニクス、自動車、消費財、小売)の在中多国籍企業180社以上の上級管理職の調査を実施。さらにIBMでは、中国の第一線での業務経験を持つ外国人および中国人50人の管理職にインタビューを行って、人口、平均年収、1人当たりGDPといった主要な人口統計学上および経済上の数値を基に、中国の650以上の都市を6つに分類した。「中国市場で勝つ:収益性ある成長のための新たなビジネスモデルと経営(」と名づけられたこの調査では、中国の大量消費市場が持つ機会を開拓し、通常この分野で優勢な中国国内企業と効果的に競合していくために、多国籍企業が自らのビジネスモデルと経営方法を変革する必要があるという点が強調されている。

 また、この調査では、ビジネスモデルを見直す必要性は、企業の中国における事業歴とは直接関係がないという結果も出ている。例えば、中国で5年以上の実績を持つ企業は、新規参入企業と比較して47%高い収益性を実現しているが、驚くべきことに、中国で10年以上の実績を持つ企業の収益性は、実績が5〜10年の企業をわずかに下回っていることが分かった。

販売および流通における課題

 今回の調査では、新興都市に拡大しようとする多国籍企業が中国で成功するには、従来のレガシーな販売および流通チャネルを変える必要があると述べられている。調査によると、外国企業の販売方法は、その42%が依然として3層以上の卸業者を通過しているほか、販売の可視性を重視している企業は10%に過ぎず、そのせいでコスト高の構造が生じ、消費者の理解が限定されてしまっているという。

 また、調査の回答者は、中国におけるビジネスでは特殊な関係が今後も重要な部分を占めていく、との認識を持っている。その一方で、規制緩和によって垣根が低くなり、企業が大量消費者に狙いを定めるにつれて、顧客の洞察や販売能力の優先順位が非常に高くなるだろうという認識も持っている。流通の役割も変わってきており、市場をリードする多国籍企業は、物理的な流通を徐々にロジスティクスの専門家にアウトソースしていきながら、流通業者に対しては、販売開発や小都市への浸透に力を入れるよう働きかけている。

研究開発および調達における課題

 そのほか、大量消費市場で勝ち抜くには、よりシンプルかつ機能的な製品を低価格で欲しいというニーズを満たす高品質の製品を作ることが必要であり、通常ならば、より地元寄りのサプライヤーを利用しなければならなくなると報告している。回答者の4分の3が、最も大きな課題は地元中国のサプライヤーを見つけることだと回答している。とはいえ、この調査では、多国籍企業による現在の中国からの調達率は全世界の収益のわずか9%に過ぎず、各企業はこの割合を今後3年間で、57%増の14%にまで引き上げようとしているという結果が出ている。多国籍企業は、節約のためだけでなく、地元市場の洞察や不可欠なリソースの管理などの戦略的メリットを生み出すためにも、自社の調達戦略の変革を進めている。

 調査では、多国籍企業は、研究開発および調達における4つの主要分野で適切な価格帯で製品を開発し、中国の大量消費市場を開拓しなければならない、と強調されている。具体的には、地元市場のニーズを満たす地元の研究開発および製品仕様の確立、地元サプライヤーの特定および選定の改善、地元サプライヤーとの連携強化と平行した知的所有権の保護、および調達期間の能力強化、がこれに該当する。

人材における課題

 多国籍企業が、中国において深刻かつ増大する人材不足の問題に直面していることも明らかになった。これが成長のボトルネックとなっており、多国籍企業間、および中国国内企業との間で、大量消費市場で必要とされる重要なスキルを持つ従業員獲得のための競争が生じると、状況は悪化する一方となる。多国籍企業の現在の人材不足に関して、多国籍企業の人事担当者が指摘した理由の上位2つが、候補者の英語のスキルや、コミュニケーションおよび管理能力といった「ソフト」スキルの不足だった。

 回答者は、多国籍企業が成長するには、内部の人材のパイプラインを構築する必要があると指摘。これには、大学や専門学校との連携を深め、大量市場を追求するために必要な一連のスキルを育成できる多くの人材に対して、優先的に手の届く状態にすることも含まれる。

 一部の市場では、中国人の専門職が管理職に昇進するのを妨げる「目に見えない障害」があるという認識にもかかわらず、多国籍企業は、特に販売、物流および製造などの職務において、管理スタッフのローカリゼーションが高水準に至っていると報告している。こうした動向は、企業がコスト効率の高い方法で事業の拡大を図り、大量市場を追求するために必要な地元市場の洞察を得ようとするにつれて、さらに盛んになっていくものと思われる。

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