インストールが楽になるようにと始まったディストリビューションだが、その開発/配布体制にも発展の流れがある。ライセンスの話も整理しながらポイントをまとめていこう。
Linuxカーネルは、GPLのライセンスで配布されているので、ユーザーは、
ことが可能である(図1)。
再配布の際、販売することも、無償で配布することもできる。通常はバイナリとソースが同時に配布されることが多いが、バイナリだけを入手した場合は、有償もしくは無償で入手元からソース入手の手段を提供してもらえる。
なお、よくある勘違いは、GPLなら誰でもソースを無償で入手できるということである。例えば、あるメーカーがGPLのソフトウェアを搭載した製品を発売していたとしても、そのソースを要求できるのは、製品を購入したユーザーのみである。メーカーは他者に公開する義務を持たない。また、製品を持っているユーザーが無償でソースを入手できるとは限らない。メーカーは無償でソースを提供する義務はなく、有償でも問題ない。以上の点に注意していただきたい。
Linuxディストリビューションは、「ちょっぴりLinuxが語れるようになる基礎知識」で触れたように、LinuxカーネルとGNUツールが主な構成要素だ。たいていはそれに加え、数百、数千のソフトウェアが含まれている。コアとなるLinuxカーネルとGNUツールのライセンスはGPLなので、それぞれの再配布/改良は問題ない。また多くのソフトウェアもGPLもしくはオープンソースソフトウェアと呼べる自由なライセンスなので問題ない。
ただし、ディストリビューション全体の再配布となると一概に言えない。
1つの理由は、ディストリビューションがライセンスの複合物であることだ。無償で入手でき使用できても、再配布できない、もしくは許可を取ったり契約を締結したりする必要があるソフトウェアが含まれていることがある。例えば、無償で入手可能な、Java 2 SDKやAcrobat(Adobe)Reader日本語版は、無条件に再配布してはいけない。Java 2 SDKが雑誌に添付されていることがあるが、これは許諾を得て再配布しているのである。なお、Java 2 Runtime Environmentは再配布可能である。
もう1つは、集合としての商標である。例えば実質的に商標版と同じものが無償で公開されていて、それを他者が入手し、同名でメディアを販売することは商標の侵害に当たる。もちろん許可を得れば販売は可能である。
少し前のことになるが、Red Hat Linux 8/9は、雑誌でのFTP公開版の再配布に契約と対価が必要であった。7以前は無償での配布が可能であったが、米国で転売されたユーザーからのサポート問い合わせがあったことなどから、再配布に対して厳しくなった。Fedora Core登場以降は、Fedora Coreそのものがサポート商品でななく、Foundation管理の自由なディストリビューションであるので、再配布は自由に行える。なお、オープンソースマガジンという雑誌でも商用版と同等のディストリビューションを配布しようと試みたことがあるが、価格交渉がうまくいかず、実施には至らなかった。
一方で、無許可の再配布を明示的に許可しているディストリビューションもある。主にユーザー主体のプロジェクトのもので、Debian GNU/Linux、Gentoo Linux、そしてFedora Core、openSUSEなどである。
ディストリビューションの多くはオープンソースソフトウェアで構成されているため、すぐに誰でも真似ができてしまう。そこから収益を得るためには集めて調整しただけでなく、何らかの付加価値が必要である。
当初用いられていた形態は、図3のようなものである。商用ディストリビューターは、図3上のように、オープンソースソフトウェアの集合に商用ソフトウェアをあらかじめ同梱した状態でディストリビューションを整備し、インストールサポートを付加して、パッケージで流通させていた。日本語環境を整備するために、フォントとIM(入力ソフトウェア)が添付されることが一般的だ。
その後、世界統一のグローバル開発や、商用ソフトウェアを抜いて公開版を作ることの手間を避けるなどの理由から、図3下のようにはじめから公開版として利用できるものを作成し、商用ソフトウェアはアドインするような形態が取られた。各種ソフトウェアの完成度が高まり、設定のノウハウが蓄積されたこともあり、商用ソフトウェアを後から導入しても、システム全体がうまく動作するようになったこともある。なお、ユーザープロジェクトの自由なディストリビューションから商用版が作られる際も、図3下のようにアドインで行われることが多い。
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