広域災害も「想定の範囲内」に収めるにはわが社のビジネス継続性を確立する!(1/2 ページ)

企業が具体的な被害を想定する際には、経営に与える影響を指標とするのが合理的だ。BCPにおいては、この影響度の評価を通じて、復旧を優先すべき事業の選定、許容できる業務停止期間の算定などを行う必要がある――。

» 2007年03月29日 08時00分 公開
[岡田靖,ITmedia]

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影響度は「おおざっぱな定量的指標」がベター

 事業への影響度評価は、「ビジネスインパクト評価」とも呼ばれる。BCPの具体的な作業目標を定めるために、まず業務や事業所といった主要な経営資源に対するリスクの影響を見極めていく、重要な作業である。また、目標復旧期間の実現に障害となるボトルネック要因も、この段階で見えてくる。

 影響度評価の際には、「その経営資源が使えなかったら逸失利益が1日あたり幾らになるか」といった具合に、おおざっぱな定量的指標を用いるのが良いとされている。BCPは企業経営の存続に関わるものだから、当然ながら金額に換算した定量的な指標を用いて評価することが望ましい。後に業務の停止期間がどこまでなら許容できるかを検討するため、その材料としては逸失利益を主な指標にすると良いだろう。

 一方、金額換算を始めると緻密な計算をしたくなる人も(特に日本企業には)多いと思うが、そこまでは必要がない。ここで行う影響度評価は、対策を優先すべき業務の選定や、その業務停止がどこまで許容できられるかという目標復旧時間設定の目安として用いる判断材料に過ぎない。

 そもそも、災害が想定したシナリオ通りになるケースはまずないのだし、事業そのものも常に変動しているのだから、不確定要素を完全に排除することもできない材料を用いて緻密な計算をするのは無駄というものだ。むしろ、その時間やコストは、対策立案やその後の評価に振り向けるべきだと言えよう。

優先業務を決めるポイントは「経営者の視点」

 広域災害などの場合、しばしば影響は複数の事業・業務に及ぶ。被害を受けた全ての業務を迅速に復旧することは困難であるから、優先順位をつけて取り組まねばならない。

 幅広い事業を展開しているような企業では、なかなか優先順位をつけにくいこともあるだろう。また、各業務が複雑に関連し合っており、どれも重要だと思われるケースも少なくないはずだ。もちろん、影響度評価は一つの目安となるが、どれだけ緻密な計算をしても相当の誤差を含む数字であり、あくまでも目安にしかならない。

 また、社会インフラやそれに近い部分に関わる企業では、むしろ災害時に一層の活動が求められることも少なくない。例えばITサービス企業なら、顧客システムの復旧に尽力することも必要となるだろう。こうした業務は、平常時の業務より優先されるべきではないのか。

 そこで大きなポイントとなるのが、経営者の視点だ。常日頃から企業活動全体を視野に入れ、その将来像を頭に描いている経営者なら、最も重要な事業を直感的に言えるはず。そもそもBCPそのものが経営判断なのだから、ここで優先業務の判断を下すことも、経営判断の一環と言える。

 とはいえ、経営者の直感が全ての要素を網羅した最善の判断であるとは限らない。短期的な影響は軽微なものの、中長期的には大きな影響を及ぼすような業務も中には存在するだろう。そうした業務こそ復旧を優先すべきという意見もあり得る。優先業務の選定には、トップの意見に加え、各部門長の意見や他の要素を加味して、総合的に判断することが望ましい。

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