ハッカーの定義はあいまいなものです。ハッカーとは、「ハックする人」以上の意味を持たず、むしろある種の性格分類だからです。その性格がプログラミングに向かうとき、人はその人をハッカーと呼びますし、分野が違えば「異端者」、「改革者」、「革新派」などと呼ばれることでしょう。
さて、そのようなハッカーが幸せに生きるための、人世訓のようなものを幾つか紹介しましょう。幾つかは、わたしの「ハッカー人生」から直接学んだものです。
プログラミングの世界で不可能なことはめったにありません。制限は時間と手間と知識の限界だけです。ですから、いつでも「やればできる」のです。こう考えれば「やりたいことをやらない」理由が減ります。
何かを作ろうとしたとき、世の中に同じものがすでにあるなら無駄になります。そのような無駄は「車輪の再発明」として嫌われます。しかし、車輪が存在しないとき、あるいは自分ならもっと良い車輪が作れると感じたときには、ためらわずに作り始めるのがハッカーというものです。ちょっと偉くなると、自分で作る代わりに部下に作らせたりします ;-)。
あらゆる制約はハッカーの敵です。自分の能力、意思、行動、言論への制約により不愉快な思いをするときには、それを取り除くべく行動するのがハッカー的です。フリーソフトウェア運動も、オープンソースも、そのようにして発生しました。ただ、あまり過激になって非合法活動(クラッキングとか)に身を落とさないよう、ここでは忠告しておきます。
ハッキング能力とコミュニケーション能力は比例しません。しかし、ハッカーとして「作品」を一人で完成させることができる人は稀です。ですから、(例え苦手でも)コミュニケーションに時間を取ることが、ハッカーとして「成功」するのに役立ちそうです。
大学卒業以来、「ハッカーでも社会人として生きていける」ことを目標に生きてきました。いまのところ何とか実現できているようです。皆さんもハッキングと幸せな生活を両立させてくださいませ。Happy Hacking!
さて、次回はGRUBの開発者として知られる奥地さんにバトンを渡そうと思います。
本記事は、オープンソースマガジン2005年12月号「ハッカー養成塾!」を再構成したものです。
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