Debian 4.0はDebianによるDebianの再定義Review(2/2 ページ)

» 2007年04月19日 08時00分 公開
[Bruce-Byfield,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine
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インストールされるソフトウェア

 Debian 4.0は、Debianのほかの最近のマイナーリリースと同様に、インストールされるソフトウェアの選択に関してミニマリスト的なアプローチを取っている。インストーラでインストールされるデフォルトのパッケージは、システムユーティリティとデスクトップ環境のためのものとなっており、パッケージ数は合計で 656個となっている。この数字はほかの最近のディストリビューションのパッケージ数の約3分の1となっている。この結果としてDebian 4.0は、ユーザーがシステムに何があるのかを正確に把握しながらブートすることができるほどパッケージ数の少ないスリムなシステムとなっている。ただしそのために、インストールの後に、例えばX-Chatなどのお気に入りのプログラムを追加する時間が必要になる。さらに言えば、最近のGNOMEアプレットが動作基盤として必要とするようになっているMONOさえも、デフォルトではインストールされない。しかし最近、DebianにMONOを追加しようとして苦しんだことのある人にとっては、パッケージレポジトリ内の依存関係がついに修正されたので一安心だろう。

 Debianの正式リリースというのは、最先端のディストリビューションになることをねらったものではない。そうではなくてDebianの正式リリースというのは安定版パッケージレポジトリ内に置かれていることからも分かるように、最新式であることよりも安定していることをより重視したものだ。Debian 4.0でもこの伝統は引き継がれていて、最先端からはやや遅れていて、より安定している(と思われている)バージョンのソフトウェアが含まれている。例えばDebian 4.0のデフォルトのカーネルは最新の2.6.20.6カーネルではなく2.6.18カーネルになっている。同様にGNOMEについても最新版の2.18ではなくGNOME 2.14を使用している。とはいえ標準的なGNU/Linuxアプリケーションの成熟度は高まってきているので、数年前にそのような選び方をした場合と比べ、影響は小さくなっている。そしてそれでもなお最新版でなくてはならないという場合には、インストール後にテスト版や不安定版やさらには experimentalのレポジトリを使ってアップグレードを行なえば良い。

 Debian 4.0では、フリーなディストリビューションとしてのDebianの立場を保つために、Firefoxの名前はIceweaselウェブブラウザとなっていて、Thunderbirdの名前はIcedove電子メールクライアントとなっている。これらの名称変更はMozilla Foundationの商標管理の取り組みから生じたものであり、各プログラムの機能に対する影響はまったくない。従って例えばIceweaselに機能を追加するためにFirefox拡張を利用することもできる。Debianコミュニティーの考え方に特に共鳴しているわけではない人にとってはこのような名称変更は無意味なことのように思われるかもしれないが、商標問題解決のために必要なこのような変更をしたからといって特に不自由することもないはずだ。

セキュリティとソフトウェアのインストール

 Debian 4.0には、例えばルートユーザーがデスクトップにログインするのを許可しないなど、セキュリティ対策がデフォルトで幾つか施されている。しかしセキュリティに高い関心を寄せている人なら、インストールの際にエキスパートモードを使う必要があるだろう。エキスパートモードでは、SELinuxを有効にするためのオプション、GRUBブートマネージャにパスワードを追加するためのオプション、ルートパスワードの代わりにUbuntuで行なわれているような方法でsudoを使用するかどうかのオプションなどが用意されている。

 Debian 4.0では、パッケージのインストール用のソフトウェアとしてSynapticが含まれている。Synapticはapt-getやdpkgのGUIを提供するプログラムのうち、おそらく最もユーザーフレンドリーなプログラムだが、機能的にはまだapt-getやdpkgよりも劣っている。なおソフトウェアをどのようなツールを使って追加インストールするにしても、(もともとエキスパートモードでインストールしてシステム上でnon-freeのソフトウェアが利用できるように設定したのでなければ)/etc/apt/sources.listにリストされているレポジトリにcontribセクションと non-freeセクションを付け加えなければ、FlashプレーヤーやAdobe Acrobatを追加インストールできないということに注意しよう。

まだまだ健在

 Debianの衰退や没落のうわさはかねてより囁かれている。Debian 4.0は、記事の冒頭で述べた「初心者には簡単で、上級者にはチューニングしやすい」という観点からは必ずしもすべての点で成功しているわけではないかもしれないが、全体的に見て、Debianの再定義という観点から、Debian衰退/没落のうわさに対する反駁として十分に成功している。

 最近では多くのディストリビューションの目的が、オペレーティングシステムのことをあまり理解していないユーザー向けの「Windowsのフリー版」となることになってきているようだ。Debianはそのような流れの逆を行っている。Debian 4.0では、ユーザーに対して「ユーザーは無知でいたがっている」と見なすのではなく、ユーザーを学生、つまり最初は知識が乏しいかもしれないが学ぶ能力を持った人として扱っている。これは大胆なアプローチではあるが、同時に今日のほかのディストリビューションに欠けていて非常に必要とされているアプローチでもある。つまりDebianは、ここで新たな存在価値を見つけたのかもしれない。そしてその存在価値は、Debianの生き残りを保証するものになる可能性もある。

Bruce Byfieldは、NewsForge、Linux.com、IT Manager's Journalへ定期的に寄稿するコンピュータジャーナリスト。


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