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» 2007年04月20日 13時00分 公開

ITエンジニア進化論:トラブルをチャンスに変えるリカバリー法【その2】

「最悪の場合、胴体着陸します」――先月発生した全日空ボンバルディア機の胴体着陸事故において、機長のリカバリー能力が試された。機長の落ち着いた姿勢と上手なリカバリーが惨事を防ぎ、結果として全日空の評価を上げることになった。トラブルの初動はどうあるべきなのだろうか。

[克元 亮,ITmedia]

トラブルの前にリカバリーできるかが決まっている

 2007年3月に発生した全日空ボンバルディア機の胴体着陸事故をご記憶の方は多いだろう。著者は以前、函館・丘珠空港を結ぶボンバルディア機に搭乗したことがあるが、今回の事故をきっかけに明るみに出たボンバルディア機の故障の多さを見聞して、背筋が寒くなった。

 しかし、一歩間違えれば大惨事につながる状況下において、適切な対応でリカバリーに成功した全日空の機長が高く評価されている点に注目したい。

 飛行機もシステムも人間が設計・製造・点検するものだ。人間の手が介在している以上、ミスを完璧には防げない。ならば、事故は必ず起き得る。事故が起きたときにどうすべきか。全日空の機長のように、優れたリカバリー能力こそが求められるのだ。そのためには、リカバリープランをあらかじめ決めておくことが重要だ。このリカバリープランには2つのメリットがある。

 1つは、どのようなトラブルの時にはどう対応すべきかを複数の対策案を評価して決めておくことで、最善の策が取れること。もう1つは、これに沿ってあらかじめ訓練しておけば、急なトラブルでも冷静に対処できることである。つまり、トラブルがまだ発生していない時点で、すでに勝負はついているのだ。

リカバリーでは問題そのものと相手の感情に配慮する

 前回も述べたとおり、システムトラブルの対応は、それを受けた初動の時点がとりわけ重要なのは言うまでもない。その際、顧客は2つの問題を抱えていると考えるべきだ。1つは、トラブルの内容そのもの、もう1つは怒りや戸惑いである。

 とかく、エンジニアはロジカルに考えがちで、トラブルの内容にフォーカスしやすい。しかし、実は感情面にも配慮が必要である。人間は理屈だけで動いていないからだ。

 顧客への説明では、すぐに駆けつけて、相手の感情に配慮し言葉を丁寧に使う。内容は、簡潔に結論から入るべきだ。トラブルが起きた時に、顧客が真っ先に知りたいのは、そのいきさつではない。今の時点でトラブルが解決したのかしていないのかだ。顧客が知りたいことをまず説明する。次にその理由、解決策を説明していく。また、解決策を説明する場合には、いつまでに対応するのか時期を明確にすることが大切だ。

 なお、顧客への説明は、顧客と対決するためのものではない。無用な対決姿勢と受け取られないように、座る位置にも気をつけたい。机を挟んで対面するのではなく、アイコンタクトしやすい直角の位置に座る。また、システムの責任者自らが説明するか、少なくとも同席させた方が良い。服装もきちんとすべきだ。社内で運用や開発ばかりやっているエンジニアには、カジュアルな格好で仕事をしている例が多い。しかしそれでは見かけで損をする。

 米国の心理学者であるアルバート・メラビアン教授は、人の第一印象は何から影響を受けやすいかを、世界の数十民族にわたって調査している。その結果によれば、言葉よりも見た目や表情、しぐさなどの方が影響が大きい。外見や声そのもので第一印象の93%が決まるのだ。ボンバルディア機の胴体着陸でも機長の落ち着いたアナウンスが乗客に安心感を与えた。エンジニアも、ピシッとしたスーツにネクタイを締め、落ち着いた声の調子で説明すべきだ。

 しかし、事後策や責任問題などで顧客との解決が遅れるケースもある。その場合、どうしたら良いのだろうか。次回は、対応方法の変更について紹介したい。

著者プロフィール:克元亮

All About『ITプロフェッショナルのスキル』ガイド。SEのキャリア形成やスキルアップをテーマに、書籍やウェブ記事を企画・執筆。近著に『SEの文章術』(技術評論社)、『ITアーキテクト×コンサルタント 未来を築くキャリアパスの歩き方』(ソフトバンククリエイティブ)がある。日々の執筆や読書を、ブログ『克元亮の執筆日記』でつづっている。


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