日本HPが中小企業向けに新たに投入した「HP StorageWorks AiO」は、ストレージ知識の少ない管理者でも容易に運用できる。HPとマイクロソフトの強力なパートナーシップに基づいてWindows Storage Server 2003 R2を採用しているのもその理由の1つだ。
米Hewlett-Packard(HP)と米Microsoftは、両社の製品やサービスのライフサイクル全般で密接に協業するFrontline Partnershipを締結している。この強力な両社の関係はストレージ分野にも及んでいる。日本HPが1月18日に発表した「HP StorageWorks AiO(All-in-One Storage System)」は、OSにMicrosoftの「Windows Storage Server 2003 R2」が採用されるなど両社の密接な関係に基づいた製品だ。
マイクロソフトは2003年4月、「Windows Server 2003」をベースにしたストレージ専用OS「Windows Storage Server 2003」を市場に投入。2006年7月には「Windows Storage Server 2003 R2」(R2)をリリースするなど継続的な機能強化を続けている分野だ。
マイクロソフトWindows Server製品部の浅野智氏によると、同社は「Microsoft Universal Distributed Storage」と呼ばれるビジョンの下、ストレージ市場に積極的にアプローチしている。
業界標準のハードウェア上に中核ソフトウェアとしてWindows Storage Serverを搭載することで、共通化されたストレージプラットフォームを可能に(Universal)し、DAS(Direct Attached Storage)、NAS(Network Attached Storage)、SAN(Storage Area Network)といったあらゆる接続形態で柔軟に企業のストレージ環境にアクセスできる。
特に最新版のR2では、iSCSI(IP-SAN)対応が強化ポイントの1つとなっており、HP StorageWorks AiOは、このメリットを引き出すことで、現在の中小企業が直面する新たなストレージ要件に合った製品に仕上がっている。
現在では、大企業ばかりでなく中小企業もデータの増大は著しくストレージ運用管理の効率化が求められている。中小企業であっても情報漏えいなどのリスクは変わらず、データを格納する器となるストレージに求められる要件は大企業となんら変わらない。そのためには、ネットワーク化による管理上のメリットを引き出していく必要がある。
しかし、ファイバチャネルを使用したFC-SANは、導入に当たっての専用のスイッチが必要になるなど初期コストが高いことに加え、設定や運用管理に高度な技術力が必要となる。そのため、中小企業にはどうしてもSAN導入の敷居は高かった。
そこで注目されているのがiSCSIという技術だ。iSCSI は、SCSIコマンドをIPパケットでカプセル化することでIPネットワークをSANとして利用できるもの。FC-SANとは異なり、既に価格がこなれたIPネットワーク機器を利用できるため初期導入コストを抑えることができ、運用上はSANのメリットを享受できる。
実際に各種の市場調査会社のレポートでもiSCSIはNASやFC-SANといった分野に比べても今後の高い成長が見込まれているが、特にストレージのネットワーク化にこれから取り組む中小企業が採用するメリットは大きい。
このような点からマイクロソフトはWindows Storage Server 2003 R2でのiSCSI対応を強化しており、iSCSI対応のストレージ・デバイスへのアクセスを可能にするイニシエータだけでなく、R2サーバでは、iSCSI経由でストレージに直接アクセスするためのターゲット機能である「Windows iSCSI Target Application Pack」を提供している。
HP StorageWorks AiOでは、Windows Storage Server のiSCSI対応メリットを生かすことで、IP-SANが中小企業の新たなストレージニーズに対する大きなアピールポイントになっている。
また、Windowsの使い慣れたGUIで操作できる点は、HP StorageWorks AiOがターゲットにするストレージ専任の管理者を配置できないような企業にとっては大きなメリットとなる。特にストレージの管理性はHPも注力しており、独自の管理機能を組み込み、統一されたGUIから一元的な管理を可能にするなど強化が図られている。特に既存のExchange2003/2007、SQL Server2000/2005と連携し、データのAiOへの移行を自動化し、移行後にはそれらのアプリケーションと連携したストレージ管理、スナップショット/バックアップ管理を実現している。また、これらの管理性を持ったファイルサーバとしても利用できる為、中小企業の管理者にはさらに使いやすいものとなっている。
マイクロソフトの浅野氏は「HPの中小企業向けのストレージはさまざまな工夫が凝らされている。StorageWorks AiOはその代表的な製品でもあり、HPとマイクロソフトのパートナーシップをストレージ分野で象徴する製品と言える」と話す。
StorageWorks AiOは、開発やサポートについてもFrontline Partnershipによる強い協業関係が取られており、企業ユーザーにとっても安心して採用できる製品であるといえるだろう。
今後のWindows Storage Server “Longhorn”について現時点で公表されている新機能を紹介しておこう。マイクロソフトはWindows Storage Serverに関しても継続的な機能強化を行ない、パートナー各社との協力体制でストレージ市場への取り組みを強化していく計画だ。
まず管理インタフェースとしては「Storage Explorer」と呼ばれるGUIにより、SAN上のすべてのデバイス情報を一元管理できるようになる。バックアップに関しても、より使いやすいバックアップ/リストアツールとして「Server Backup」が提供される予定だ。
ファイルアクセス・プロトコルも「SMB 2.0」となり、ネットワーク負荷の軽減と認証機能の強化、暗号化によるセキュリティ向上など、現在のビジネス要件にあった強化がなされる。また新たに実装される「Transactional File I/O」はファイルシステムをデータベースのように振る舞わせることができる機能で、ファイルシステムに対してコミットやロールバックといったトランザクション処理の機能が提供される。これにより、トランザクション系システムのストレージとしても信頼性や安定性が向上する。
またセキュリティ機能としてWindows Vistaで提供されている「BitLocker」が導入される予定で、ディスク上のデータを暗号化して保護できるようになる。
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企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2007年5月27日