「ハケンの品格」で占う――強い女性ドラマがヒットすると景気は?景気探検

IT関連の在庫調整や米国経済の減速の影響で製造業中心にもたつき感はあるが、個人消費の推移などから、景気の底堅さを示唆するものも多い。身近なデータからも景気の流れを追ってみよう。

» 2007年05月02日 11時00分 公開
[景気探検家・宅森昭吉,アイティセレクト編集部]

 1〜3月期の経済指標は、日銀短観3月調査で大企業製造業の業況判断DIが4期ぶりに悪化したり、1〜3月期・鉱工業生産指数の6四半期ぶり前期比減少が予測されたり、景気動向指数1〜2月分で2カ月連続の50%割れが予測されたりと、IT関連の在庫調整や米国経済の減速の影響で製造業中心にもたついたものが多い。

 しかし一方で、1〜3月期実質GDPでは個人消費が2四半期連続でしっかりした前期比になりそうなことが予想されるなど、景気の底堅さを示唆するものも多い。07年前半はIT関連の生産調整などが予測される。景気は07年初に多少のもたつきはあっても、08年にかけて拡大局面が続きそうだ。07年度も実質2%程度の経済成長が続こう。

 身近なデータをみても、多少不透明さはあるものの緩やかな景気拡大基調はしっかりしている状況を裏付けるものが多い。

 強い女性が主人公の連続ドラマが流行する時は景気のもたつき局面であることが多い。1〜3月期のドラマでは、スーパー派遣社員・大前晴子さんが主人公の「ハケンの品格」が視聴率で第3位だった。消費者マインドに霧がかかっていることを裏付けたものと言えよう。一方でラブストーリーの「花より男子2」は、2月最終週と3月第1週でキムタク主演ドラマ「華麗なる一族」を上回った。主題歌「Love so sweet」や挿入歌「Flavor Of Life」もヒットした。これは景気の明るさを示唆する材料である。

 企業の広告費の代理変数と言える大相撲の懸賞本数は1月場所で1146本と史上最高水準を更新した。前年同場所比18.4%増だ。千秋楽結びの一番、横綱・朝青龍対大関・琴欧州戦には45本の懸賞がかかった。

 しかし、3月場所は957本で前年同場所比1.7%の低い伸びにとどまった。一部週刊誌の八百長疑惑報道もあり、全体としては伸びが鈍ったようだ。とはいえ、朝青龍対大関・千代大海の千秋楽結びの一番は42本と、40本の大台はキープしている。また、3月場所14日目の朝青龍対大関・白鵬の一番には、05年度5月場所の朝青龍対千代大海の一番と並び14日目としては史上最高の42本の懸賞がかかった。それなりの底堅さを示した3月場所であった。

 プロ格闘技では、全日本プロレスの春の本場所と言われる「チャンピオン・カーニバル」で武藤敬司が3年ぶりに優勝した。このチャンピオン・カーニバルや新日本プロレスの「GIクライマックス」で、武藤敬司などの第三世代の正統派人気レスラーが優勝した時は景気拡張局面に当たるというジンクスがある。

 なお、関西テレビ「発掘!あるある大辞典II」の納豆の効果に関する捏造問題は、意外にも納豆への支出増に結びついている。総務省の「家計調査」によると二人以上世帯の昨年10月1日〜1月7日の1日当たりの納豆への支出金額は約10円であった。1月7日の放送のあと1月8日に約19円となり、その後捏造発覚までは約16円で推移した。1月20日の発覚後も1月下旬は約13円、2月中は約12円と、以前よりも高い支出金額のままである。

 一見、景気にマイナスとみられる社会現象が景気の下支え要因になってしまうところに、現在の景気の底堅さを感じることができる。

(「月刊アイティセレクト」2007年6月号の「景気探検 第62回 時代を読む」より)

たくもり・あきよし

「景気ウォッチャー調査研究会」委員。過去に「動向把握早期化委員会」委員、「景気動向指数の改善に関する調査研究会」委員などを歴任。著書は「ジンクスで読む日本経済」(東洋経済新報社)など。


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