「ホワイトカラーの生産性向上」は永遠のテーマだ。新規事業がいくつも立ち上がっていくなかで、人材のスムーズな異動によって、効率化をすぐさま実現した事例を紹介する。リーダーから現場への指示がタイムリーになり、売り上げアップにもつながったという。
効果測定
導入後、半期の売り上げが前年比で約138%に
導入前の課題
グループ内で営業スタッフが異動するとき、引き継ぎを属人的なコミュニケーションに頼らざるを得ない部分があった。また、上長が現場の営業活動をリアルタイムで把握するのが難しく、対応が後手に回るケースがあった
導入後の効果
顧客情報に紐づいた過去の営業履歴などの情報も共有できるようになり、引き継ぎが円滑に行われるようになった。さらに案件の進捗状況に合わせて、上長が的確な指示を現場へタイムリーに出せるようになった。
サイバーエージェントは、いち早く市場を開拓した先行メリットと、アドバタイズにとどまらない総合的な提案力を活かして、インターネット広告代理事業で確固たる地位を築いている。また国内有数の規模になった「Ameba(アメブロ)」を中心に多様なメディア事業も展開中だ。
事業の成長に伴って、同社のインターネット広告代理事業の営業人員は、05年から06年にかけて約3〜4割増加。同時に取引先社数も1年で約200社と、大幅に増えている。そこで課題になったのが顧客情報の管理だった。それまで日々の営業活動の中で参照する顧客情報は、Excelを使ってローカルで管理したり、基幹システムにアクセスして照会していたが、いずれ限界が来ることが予想された。
具体的に課題として浮上したのが、引き継ぎの問題だった。同社ではさまざまな新規事業を立ち上げていたため、グループでの営業人員の異動も活発に行われていた。ただ、前任者がクライアントにどんなアプローチをしていたのか、先方の担当者は誰で、人数は何人なのか、といった営業履歴や詳細な顧客情報は従来の管理ツールでは把握しきれなかったため、引き継ぎは属人的なコミュニケーションに頼るしかないのが実情だった。
また、営業をマネジメントする側からも、スタッフや案件数が増えていくと、現場の営業活動の実態が見えにくくなることが指摘されていた。それまで現場の営業報告は、創業以来の文化であるメーリングリストを活用して全社に流されることになっていた。しかし、それでは良い話しかMLに報告されず、上司が現場の状況を正確に把握するのは難しい点があった。
また、あるクライアントの取引実績が下がっていた場合、基幹システムから個別の取引先の売り上げ額を見て現場に指示を出すこともできるが、売り上げが判明するのは、基幹に売り上げが計上される2週間から1カ月後で、指示が後手に回る可能性もある。上司が現場の状況を漏れなく把握して、適切な指示をタイムリーに出すには、案件の進捗状況を含めて管理できる情報インフラが必要だった。
そこで同社では、05年4月から管理ツールの導入を検討。社内で開発することも検討したが、最終的に選んだのはSalesforceだった。インターネット広告事業本部営業本部長の大下徹朗氏は、選定の理由を次のように語る。
「この業界はトレンドの変化が激しく、そのときどきで注力したい商材や広告手法も変わっていきます。それらに対して柔軟に対応していくには、ある程度自由度の高いツールでなければなりません。その点、Salesforceは導入時だけでなく、その後のカスタマイズも容易だった点が魅力でしたね」
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