GPLv3にまつわる8つのよくある誤解Beginner's Guide(2/3 ページ)

» 2007年05月17日 03時25分 公開
[Bruce-Byfield,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

GPLv3を使用する企業には自社特許ポートフォリオの開放が求められる

 2006年9月に出された声明書において十数名のLinuxカーネル開発者は、「GPLv3でライセンスされたプログラムを企業のWebサイトに置くという行為だけで、その企業の特許ポートフォリオ全体が危険にさらされる恐れがある」と主張した。

 しかし、GPLv3のどのドラフトのどの部分を読んでもこうした主張を裏付ける個所は見当たらない。スミス氏は次のように説明する。「企業が GPLv3の下にあるソフトウェアを配布すると、ユーザーがその成果物を利用、共有、改変できるように、そのソフトウェアで実施される特許すべてのライセンス(実施権付与)を求められることになる――ただそれだけのことだ。彼らが配布するプログラムで実施されていない特許のライセンスまで要求されることはない。また、その特許の権利全体の譲渡を要求されるわけでもない。別のプロプライエタリソフトウェアの開発者によってGPLv3ソフトウェアでの利用を対象としてライセンスされた特許が侵害された場合、ディストリビュータはやはり特許侵害訴訟を起こすことができる」

祖父条項案によってNovellはほかの企業よりも優遇される

 2007年3月28日より前に結ばれた協定に対する選択的な特許権保護を認める祖父条項は、GPLライセンスソフトウェアを配布するほかの企業よりも確かにNovellを優遇している可能性がある。フリーソフトウェアのディストリビュータの中でNovellだけが、今後、万一Microsoftの知的財産権の侵害がGNU/Linuxに見つかったとしても、自社の顧客に免除を与えることができるからだ。

 この祖父条項は、基本的には戦術的手段であり、法的および実施上の必要性から止むを得ず含められている。この条項が法的に必要なのは、GPLv3 の公開前に結ばれた協定にはおそらくGPLv3が適用できないためである。また、実施の面で必要とされるのは、フリーソフトウェアのほかのディストリビュータを混乱させないためだ。スミス氏によると、Novellだけでなくほかの企業による特許調停で彼自身が「無害」と判断するものに適用可能な文言の導入について、FSFは慎重を期しているという。「NovellによるGPLv3ソフトウェアの配布を禁じたとしてもフリーソフトウェアのディストリビュータの多くがわれわれから離れてしまうのでは、例え勝利をおさめても犠牲が大き過ぎる」とスミス氏は言う。

 とにかく、この祖父条項についてはまだ最終的な決定がなされていない。ストールマン氏、スミス氏、ブラウン氏は皆、できることなら正式公開版ではこの条項を削除したい、と述べている。しかし、例え残ったとしても、この条項がNovellに与える優位性は同社の協定の消滅とともに失われる。「当面は不公平な内容になっていても、数年後にはおのずと修正されることになるだろう」とスミス氏は語る。

GPLv3はデジタル著作権管理(DRM)テクノロジーを阻害している

 GPLv3の最初のドラフトでは、ロックダウンテクノロジーだけでなく――少なくとも理論上は――単純なファイル暗号化さえも認めない、という強力な文言が第3項に含まれていた。「技術的手段によってユーザーの権利を奪うことを一切認めない」という同項の表題や、おそらくはFSFの「発想からして欠陥(Defective By Design)」という反DRM運動とも相まって、この文言はGPLv3がすべてのDRM手段を否定するかのような印象を作り上げることになった。こうした動きは多方面から非難され、特にLinuxカーネルの開発者たちはソフトウェアの利用法に何らかの制限を課すことに根本的な異論を唱えていた。

 だが、こうした認識はドラフト第3版によって是正されるはずだ。フォンタナ氏によると、現行ドラフトの第3項には「DRMとの直接的な関連性が一切ない」という。むしろ、今回の第3項は、ユーザーによるフリーソフトウェアの複製、改変を妨げ得るある種の法律からユーザーを保護することに関係している。1990年末から、一部の国々ではいわゆる「(DRMの)迂回を禁じた法律」が制定され始めた。これは事実上、著作権保持者の従来の権利を拡大して著作物の利用者に損失を与え、公正な利用の権利を骨抜きにしてしまうものだ。例えば、米国ではデジタルミレニアム著作権法(Digital Millennium Copyright Act)の条項の1つに迂回を取り締まる規定が含まれている。GPLの下での権利を実施してフリーソフトウェアの複製、改変、共有を行ったことにより、迂回を禁じた法律の下でGPLの対象である成果物のユーザーが民事または刑事責任を問われた場合に、そうしたユーザーを守るためにGPLができるだけのことをしようとするのがGPLv3の第3項である。

 DRMなどTivo化のそのほかの形態に直接言及した文言は、現行ドラフトの第6項に含まれている。しかし、この項はDRMを禁じるものではなく、「機能する改変後のソフトウェアのインストール」に要求されるロックダウンテクノロジーのソースコードの収録をディストリビュータに求めているだけである。フォンタナ氏は次のように補足する。「これは過激なアイデアでも議論の的になるようなアイデアでもない。現在LGPL(GNU劣等一般公衆利用許諾契約書)に含まれている特徴を少し一般化したものにすぎない」

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