GPLv3にまつわる8つのよくある誤解Beginner's Guide(3/3 ページ)

» 2007年05月17日 03時25分 公開
[Bruce-Byfield,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine
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「ユーザープロダクト」の定義はGPLv3を米国外に適用できないものにしている

 最新のドラフトにおける反Tivo化の文言には、「ユーザープロダクト(user product)」という概念が導入されている。その第6項によれば、ユーザープロダクトとは「個人、家族、または世帯」向けに作られた「コンシューマープロダクト(consumer product)」であり、コンシューマープロダクト上で動作するソフトウェアは同項に記された規定に従わなければならない、となっている。スミス氏はこの定義を、「われわれに害を及ぼさないある種のビジネスモデルを妨げることなく」フリーソフトウェアに関する主要な問題を解決するための妥協案だと説明する。コンシューマープロダクトの定義において、最新のドラフトは米国のMagnuson-Moss保証法の定義を引用している。この法律は、一部の人々から米国法をほかの法域にも押しつけようとするものとみられている。しかし、スミス氏はFSFの狙いについて次のように語る。「それは具体的な定義の解釈を与えてくれる材料を使って判断を与えることであり、その材料がたまたま米国の法律にあっただけのことだ。われわれは、調査の結果に基づき、これがGPLライセンスの国際的な通用範囲を狭めることはないと考えている」

GPLv2のカーネルを用いてGPLv3のプログラムを実行することはできない

 この考え方は、相当な懸念を引き起こしている。というのも、Linus Torvalds氏をはじめとするカーネル開発者がLinuxカーネルではGPLv2を使い続けることになるだろうと宣言しているからだ。しかし スミス氏は、各種ライブラリやシステムコールのプログラミングによってカーネルとのやり取りを行うプログラムがGPLで定義された派生成果物と見なされることは決してない、と述べている。従って、プログラムはカーネルと同じライセンスを使用する必要はない。また、そうしたプログラムはプロプライエタリであっても構わない。

GPLv3は別のライセンスの増殖を招く

 GPLv3ドラフト第3版の第7項では、「同ライセンスの1つまたは複数の条件からの例外を設けることによって条項を補足する」追加条項の指定が許されている。スミス氏はこの第7項について、GPLとフリーソフトウェアコミュニティーで使用されるほかのライセンスとの相互連携を容易にする狙いがある、と説明する。こうしたほかのライセンスには、成立することが自明、または法律上の要件になっている規定(例えば、コードに付随する商標については使用権がないといった記述など)が含まれていることが多い。要するに第7項は、「保護された商標の付随したコード部分、またはわれわれがこれまでに認めてきたほかの要件を備えたコードを使用しても構わないことを明示的に述べているにすぎない」とスミス氏は言う。

 第7項で定められている例外が、基本となるGPLライセンスからの各種派生ライセンスの作成に利用できることをスミス氏は認めている。しかし、主としてこうした例外は、もともと別のライセンスを利用していたソフトウェアに対して使われるだろう、と彼は述べる。彼は、例えその認識に誤りがあっても実際的な問題が生じることは一切ないと考えており、その理由は「第7項では、条項を追加してリリースされたコードを取り出し、そのコードを GPLv3の下でリリースされているほかのあらゆるプロジェクトで利用することが可能だからだ」という。

改訂プロセスは続く

 T本稿では、GPLv3ドラフト第3版によって持ち上がった大きな問題だけを取り上げた。より詳細な内容については、ドラフト第3版の注釈付きバージョンを参照してもらいたい。

 GPLv3に対する公開改訂プロセスは、まだ終了していない。最終審査用ドラフトの公開はまだ1か月先であり、FSFはその公開の前後両時点で正式公開直前のフィードバックに基づく中間ドラフトを公開する可能性にも触れている。今のところ、中間ドラフトは公開されていないが、その可能性はまだ残っている。一部の文言、特に特許と祖父条項に関するものは、GPLv3の正式公開までに大きく変更される可能性さえある。

 とはいえ、GPLv3の多くの条項は最終的な形に近づきつつある。例え策定プロセスが継続中であるにせよ、GPLv3が正式公開されたときにこの新しいバージョンを使用するかどうかを検討できるように、今からその詳細を自ら学んでおいても早過ぎるということはないだろう。

Bruce Byfieldは、NewsForge、Linux.com、IT Manager's Journalに定期的に寄稿しているコンピュータジャーナリスト。


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