経営にITを有効活用することが企業競争力にも大きく影響するようになってきた昨今、企業の情報システム部門はどうあるべきか――第一線で活躍するらつ腕CIOに投げかけてみた。
「企業の成長にITをフル活用していくこと、そのために経営戦略とIT戦略を結び付けていくことがわたしたち情報システム部門に求められている仕事です」
ヤンセンファーマ執行役員CIOの須佐秀雄氏がこう強調するように、企業における情報システム部門の役割がここにきて大きく変わりつつある。かつては経営と乖離していた印象の強いITだが、須佐氏が指摘するように今や経営戦略とIT戦略は一体化させて進めないと、企業競争力そのものにも大きく影響するものになりつつある。その要の役割を担っているのが情報システム部門なのである。
日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)がこのほどまとめた「企業IT動向調査2007」の結果によると、情報システム部門がIT投資で解決したい中期的な経営課題のトップは「業務プロセスの変革」、次いで「経営トップによる迅速な業績把握、情報把握(リアルタイム経営)」となった。これら1位と2位は昨年の調査と変わらなかったが、昨年8位だった「経営の透明性の確保(内部統制、システム監査への対応など)」が3位に大きく順位を上げた。08年度から日本版SOX法をはじめとした内部統制ルールの義務化を前に、システム監査体制の整備などを急ぐ企業が増えている状況を反映している。このように情報システム部門の経営課題に対する意識は一段と高まっている。
一方、経営企画部門がIT投資や情報システム部門をどのように評価しているかをみると、最も肯定的な評価が多かったのは「企業のトータルコストの削減」(78%)、次いで「主要業務プロセスの再構築」(75%)となった。さらに「エンドユーザーの生産性向上」「顧客の維持、確保」「製品、プロセスの品質向上」についても概ね60%前後の肯定的な評価を受けているという結果となった。
同調査は昨年11月にアンケート形式で実施したもので、802社の情報システム部門、805社の経営企画部門の担当者から回答を得た。IT投資効果としての「企業のトータルコストの削減」は従来から不変の課題だが、経営企画部門が「エンドユーザーの生産性向上」や「製品、プロセスの品質向上」に対して肯定的な評価を行っているところをみると、経営へのITの貢献度は着実に上がっていると読みとれる。
Copyright© 2010 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.