電子情報開示違反で訴訟に巻き込まれる学校が増える!?――最新調査結果

米国の連邦裁判制度に一定期間の電子情報保持を規定する内容が追加された。教育機関では実に9割が対策を講じていないという。

» 2007年05月30日 16時50分 公開
[Chris Preimesberger,eWEEK]
eWEEK

 幼稚園から高校(12年生)までの教育機関のIT管理者を対象にした最新調査で、連邦裁判制度に新たに組み込まれた電子情報保全規則に関し、9割が何の対策も講じていないことが明らかになった。

 同調査は、ニュージャージー州オーシャンポートに拠点を置くストレージベンダーCommVaultが実施したもので、結果報告書は5月29日に発表されている。

 問題となっている修正連邦民事訴訟手続規則(FRCP)(PDFへのリンク)は、2006年12月1日に施行された。同年4月に米国最高裁判所が認可したこの新たな規制の下では、営利組織であれ非営利組織であれ、連邦裁判所の要請に応じて迅速に電子情報を開示できるようにしておかなければならない。

 これはすなわち、電子メール、インスタントメッセージ、財務データ、音声メール、テキストおよび画像といった組織が保有しているあらゆる電子ドキュメントを、「適当な」期間内に用意できるよう備えておく必要があるということだ。裁判所はのちに、この期限を30日間と定義し直している。

 CommVaultによれば、調査対象となったIT管理者のうち、裁判所規則の修正を認識していた者の割合は3分の2にとどまったという。

 さらに、FRCPへのコンプライアンス対策計画にまだ着手していない学校は、全体の90%におよんでいた。

8割が「明確なコンセプトはない」

 調査対象管理者の80%は、みずからの学校が属する学区の電子情報開示規則に対する姿勢が明確ではないと答えている。

 全体を見ると、FRCP規則にまつわる問題に対する認識と法的情報開示への備えには、学区によって明らかなばらつきがあったと、CommVaultの広報担当者は説明した。

 Osterman Researchの社長であるマイケル・オスターマン氏は、「FRCPに修正が加えられたことにより、電子情報の扱いを法的に見直す必要が生じ、情報の所有者は必要に応じてデータを生成しなければならなくなった」と述べている。

 「FRCPの修正がもたらした最も重大な影響は、電子情報が訴訟において果たす役割がかつてないほど大きくなり、適切な管理が求められるようになったことだ」(オスターマン氏)

 大半の学区が規則の修正を完全に認識している一方で、学校が電子情報開示問題を扱う際のルールを決められずにいる。学区の管理者が連邦規則に則って電子情報開示命令に従い、データを管理していく方針を定めていないため、管轄下の学校が行政責任を問われ、コストのかさむ訴訟にさらされる危険が増していると、オスターマン氏は指摘した。

深刻な問題を招くリスク

 CommVaultのArchive Center of Excellenceシニアディレクターおよび所長を兼任するマイク・イワノフ氏は、「連邦規則の改正を受け、教育機関および学校の情報技術担当者らは、学校にある機器がやり取りしているデータが、訴訟でどのように使われるのかを理解しておく必要に迫られている」と話した。

 「訴訟にかかる費用は容易に数十万ドル規模に達し、公共学区の貴重な教育予算を食いつぶすおそれがある。そうした危険性を軽減するため、学校の技術責任者は新規則について積極的に学び、電子メールに関する一連のポリシーを作成し、既存技術をコンプライアンスの視点から見直していかねばならない」(イワノフ氏)

 職員や生徒が送受信した、電子メールやインスタントメッセージなどのデジタルコミュニケーションを監視下におく必要が出て来たことで、新技術を導入する際のIT購入方針も変化し始めているという。

 eSchool Newsは2006年12月、コンプライアンスを維持する義務を負った教育機関の管理者たちが、電子情報保存技術や情報の検索および取得方法を再検討するようになっていると報じた。

 このたびの調査では、学区側がFRCPコンプライアンスにおいて最優先としている事柄が複数存在していることがわかった。具体的には、コストの高騰やリソースの減少を食い止める(90%)、電子メールおよびアーカイブ管理に付随する管理者の負担を軽くする(60%)といった現実的な課題から、リスクを減らす(60%)、FRCPが学区全体におよぼす影響を測定する(60%)などの概念的な問題まで、さまざまな回答があった。

 CommVaultおよび同社の調査の詳細は、ここから参照できる。

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