さらにTCPプロトコルの問題だけでなく、アプリケーション自体のプロトコルの問題もある。例えば、マイクロソフトのWindowsファイル共有プロトコルであるCIFS(Common Internet File System)や、Exchange Serverで使用するMAPI(Messaging Application Program Interface)では、データを細かくして送信するため、そのやり取りや確認通知などが頻繁に起こる。特にCIFSは「チャティ」(おしゃべり)なプロトコルとして知られている。
これは、もともと遅延時間の小さいLAN環境での利用を想定した仕様なので仕方ないのだが、WANを介してWindowsファイルサーバにアクセスすると、想像以上に時間がかかってしまうのだ。ジュニパーネットワークスの調査によると、例えば遠隔地にある1MBのWordファイルを開いた際に発生するCIFSアプリケーションのデータブロックのやり取りは、1万3396回にも及ぶという。仮に拠点間の遅延が50msであったとすれば、50ms×13396=約670秒もかかってしまうことになる。たかだか1MBのファイルを開くだけで10分以上も待たなければならない。
これらの問題を抱えながらWANの帯域を単に拡張するだけでは、快適な速度が得られるとは限らない。そこで、WAN回線自体は基本的には変更せず、WAN上で利用されるアプリケーションやプロトコルを念頭において速度を向上させる最適化ソリューションが登場したわけである。
次回は、WAN最適化ソリューションのマーケットの動向や、そのテクノロジーがもたらすメリット、適用範囲などについて紹介する。
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