ストレージ仮想化技術、普及するのかしないのか?Interop Tokyo 2007

ストレージの仮想化技術が普及しない原因は、どこにあるのか。Interopの講演で仮想化技術の現状と課題、そして展望についての率直な意見が交わされた。

» 2007年06月14日 07時51分 公開
[ITmedia]

仮想化という言葉は聞き慣れど……

 4〜5年前からストレージベンダーが提唱し続けてきた「仮想化技術」。SAN(Storage Area Network)の本格的導入が進み、複数のサーバでストレージを共有する基盤が確立された今でも、なかなか普及の兆しが見えない。

 仮想化技術とは、物理的なストレージを論理的に束ねて1つの仮想ストレージに見せる技術だ。これまでのストレージは、ネットワークを共有しながらもハードディスクがそれぞれのサーバにひも付けられていた。そのため、ハードディスクの使用率がサーバによって異なる場合、使用率の高いサーバはディスク増設を強いられる一方で、使用率の低いサーバは無駄な空き容量を遊ばせるという悪循環が繰り返されていた。

 しかし、空きスペースを仮想的に共有する仮想化技術であれば、総体的に空き容量を統合して使用できる。結果的に、拡張性や柔軟性にも優れたストレージ環境を構築できるというわけだ。

 こうしたメリットがあるにもかかわらず、なぜ広く普及しないのか。

 実際、Interop Tokyo 2007で開催された講演「どこまで使えるストレージ仮想化技術」で、モデレーターの新日鉄ソリューションズの大城卓氏が聴講者に仮想化技術の導入状況を質問したところ、100名強の聴講者のうち導入していると回答したのは4〜5名程度のみだった。また、導入を検討する聴講者に対して二の足を踏む要因を尋ねたところ、信頼性に対する不安を筆頭に、コストメリットが見られない、運用コストの低減が認められないという順で懸念材料が示された。

導入が進まない原因は「他社の事例」へのこだわり?

 この問題に対して、参加者のEMCジャパンの伊藤重雄氏は、仮想化技術を搭載するスイッチや優秀な管理ツールの登場など「統合の手段として仮想化を取り入れる時代は近い」と不安感の払拭に努めた。

新日鉄ソリューションズの大城卓氏(左)とEMCジャパンの伊藤重雄氏(右)

 また、自社の「SAN Volume Controller」を利用したストレージ仮想化の導入事例を紹介した日本アイ・ビー・エムの小菅芳道氏も、去年から引き合いが増えており、月に2〜3件はデモを希望するユーザー企業がいるという明るい展望を示した。ただし、「一度でも仮想化したら抜け出せなくなるのではないかと思うユーザー企業もいる」と、理解不足から来るハードルも指摘した。

 さらに、米国での導入事例は増えているものの、日本国内での導入が遅い点について、ストレージの規模が日本は小さいという理由以外にも「日本は他社の導入事例を重視する傾向にある」ことも述べた。自社のストレージ環境に仮想化技術を適用して導入事例としている日立製作所の熊沢清健氏も、「人柱になっているのかと、仮想化技術を信用しない顧客に突っ込まれたことがある」と明かした。

日本アイ・ビー・エムの小菅芳道氏(左)と日立製作所の熊沢清健氏(右)

 このほか、誰がストレージを管理するかという現場の課題も進まぬ原因の1つではないかと疑問が投げかけられた。

 事実、管理ツールが進化したとはいっても、依然としてストレージの設定は難しい。日立でも、問題が発生したときに責められるのは自分たちだという思いから、SEが導入に保守的になる傾向も見受けられるという。

 では、普及の突破口はどこにあるのか。熊沢氏は管理ツールでの互換性も高まっており、シングルベンダーのソリューションに陥らなくなったことが、より広い導入を促進するのではないかとした。

 また、小菅氏もマルチベンダー対応が進んでおり、さらには仮想ディスクの物理構成をGUIで分かりやすく表示するツールにより「敷居は低くなっている」と指摘した。「自社で十分に管理できるツールも提供されており、コスト効果も見出せるようになった」(伊藤氏)。

 各ユーザー企業の関心は高まりつつも、不安材料や事例へのこだわりから導入に待ったがかかっている。だが、その事例も徐々にだが増えている。「高い管理性とコストメリットがより理解されれば、仮想化技術の普及もそう遠い未来ではない」として大城氏が講演を締めくくった。

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