あなたの「完璧主義」は良性? 悪性?企業にはびこる間違いだらけのIT経営:第29回(1/2 ページ)

仕事へのこだわりは重要だ。細部にも目を光らせ完璧な仕事を目指してこそプロというもの。しかし、その完璧主義を勝手なタイミングで押し付けるのは…。

» 2007年06月27日 12時14分 公開
[増岡直二郎,アイティセレクト編集部]

完璧主義が引き起こす悲劇

 トップや経営者の考え方や姿勢で、改めてもらいことはたくさんある。

 その中で、筆者の実務経験やコンサルタント経験から特に注意を喚起したい1つは、完璧主義だ。トップにはいろいろなタイプがあるし、人間だから欠点もあるだろう。

 しかし完璧主義という「欠点」は、スピードを要する近年の経営に障害となる。また完璧主義は非の打ち所がなく、一見欠点には見えないため誰も異論を唱えることができない。特にマネジメント層、経営層が完璧主義を振り回しすぎると、余計に社内の構成員を打ちのめし、社内のモラルを回復し難いほど低下させる問題が出てくる。完璧主義の考え方がIT構築の場面でも貫かれると、重大な悲劇を起こすことになる。

新事業への成長も期待されたプロジェクト

 実例を見ながら検討していこう。

 中堅企業のA電子部品メーカーのトップBは、日頃からすべてについて完璧であることを求め、それを確認するために関係者に些事についてまで執拗な質問を繰り返した。

 ある時、A社は取引先顧客である問屋との間をオンラインで結び、受発注・在庫確認や引き当て・売り掛け処理などの業務をリアルタイムで処理しようと計画した。できれば、地元の小さなソフト会社と共同開発し、実績を積み上げることによってソフトとして完成させて外販に耐えうる商品に仕上げ、新事業の1つの柱にしたいという意図があった。

 新事業の模索は、社長方針でもあった。情報システム部門や設計開発部門から精鋭を集めて結成されたプロジェクトチーム(PT)によって、検討が進められた。ようやく構想の概略が完成して、経営陣に対する報告会が開かれた。PTは、取引先顧客の中から日頃の協力度もよく、企業規模や取引製品種類数も適当なC社をモデルとして選定し、C社間とのシステムを先行構築することを提案した。試行なので費用はすべてA社持ちの提案である。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2010 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ