MSとKDDI、SaaSビジネスで提携

マイクロソフトとKDDIはSaaSを利用して、PCや携帯電話からさまざまな業務システムを利用できるサービスを予定する。

» 2007年06月27日 14時45分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 マイクロソフトとKDDIは6月27日、法人向けSaaSビジネスの展開に向けて包括的に提携すると発表した。PCや携帯電話などから業務システムを効率的に利用するためのサービス基盤の開発に着手する。

 2社の法人市場向け戦略では、KDDIが固定通信と携帯電話のシームレスな利用を可能にする「FMC」(Fixed Mobile Convergence)に注力し、マイクロソフトは同社のソフトウェア製品群をサービス志向に基づいて展開をしている。

SaaS提携を発表するMSの樋口COO(左)とKDDIの田中常務

 KDDIの田中孝司取締役執行役員常務は、SaaSにフォーカスする点について、「企業は複数を業務システムの導入から利用料請求までを1本化したい、場所を問わず安全に利用したい、常に最新サービスを月額で利用したい、といった点を求めている」と説明した。

 提携では、マイクロソフトの共有型アプリケーションホスティングサービス「Microsoft Solutions for Hosted Messaging and Collaboration」(HMC)とSaaSプラットフォーム「Connected Services Framework」(CSF)を用い、業務アプリケーション提供からユーザー認証、課金・決済までを一括して行える新たなプラットフォームを開発する。

2社が開発するSaaSプラットフォームの枠組み

 同時に、このプラットフォームを利用してサービスを提供するパートナー向けにAPI公開や既存アプリケーションのSaaS化支援、事業推進の支援などのプログラムを提供する。ユーザー向けのマーケーティングや販売活動は、2社を中心にパートナーとも共同で展開していく。

 マイクロソフトの樋口泰行代表執行役兼COOは、「CFSは英BTや米AT&Tなど世界で30社の通信事業者が導入しており、日本でも業務アプリケーションの新たな利用モデルが提供できる。特に人材や資金に制約の多い中堅・中小企業ユーザーにとっては最新の業務システムを簡単に導入・運用でき、業務を効率化するメリットがある」と話す。

 これにより、ユーザー企業では個々の業務システムの管理やベンダーごとの利用料支払いなどの手間が軽減される。また、モバイルPCや携帯電話、PDA端末を用いて外勤や在宅勤務などの業務環境の変化にも柔軟に対応し、社員の生産性を高められるほか、例えばGPS機能と連携する既存サービスの機能向上や新規サービスも可能になるという。

 パートナー企業では、単独でシステムや課金・決済などの構築する手間やコストを軽減でき、サービスインの迅速化や料金回収の効率化が可能になると、2社では説明する。

2008年から、まずはauケータイでMSのオフィスアプリケーションや会社アドレスのメールを利用できるようにする

 今後はパートナー企業に対する支援プログラムの具体化や携帯電話で動作する業務アプリケーションの信頼性向上に向けた開発を推進し、10月にパートナー向けプログラムを発表する。また、au携帯電話端末からMicrosoft Officeアプリケーションを利用したり、会社のメールアドレスをau携帯電話端末で利用できるサービスを2008年3月に始め予定だ。

 サービス開始後の利用目標は、「100万ユーザーを最初のステップに、200万ユーザー、300万ユーザーと順調な拡大を狙いたい」(田中常務)としている。

パートナーの参加見通しは?

 今回の2社提携に対しては、大塚商会とオービックビジネスコンサルタント、京セラコミュニケーションシステム、シーイーシー、ソフトブレーン、ピー・シー・エー、リコーテクノシステムズの7社が賛同を表明したが、各社がサービスを提供するか否かについては明らかにされなかった。

 また新しいプラットフォームのメリットの1つである携帯電話での業務システム利用は、すでにSFAを中心にベンダーが独自のASPサービスを展開してきた。マイクロソフトとKDDIのプラットフォームに何社のベンダーが参加するのか、またどれほどのユーザー企業が既存のサービスから乗り換えるかについては不透明な部分も多い。

 これらの見通しについて、KDDIモバイルソリューション事業本部長の湯浅英雄執行役員は「KDDIだけでも約1100社のソリューションパートナーがおり、個々のユーザー企業に対してBREWを中心とした業務アプリケーションを開発・提供してきた実績がある」と話し、今回のSaaSプラットフォームについてもパートナーへの参加を広く提案していく。

 ユーザー企業に対しては、システム管理や決済の効率化に加えて「既存のサービスから乗り換えるためのプラスアルファのメリットを検討する」という。また、マルチキャリア対応については「まずはKDDIのシステムで信頼を確保することが第一だが、マルチキャリアは想定されるニーズなので、次のステップとして検討すべき課題になるだろう」と話す。マイクロソフトの樋口COOも「クローズドなプラットフォームではない」と話しており、将来的に他の通信事業者にも開放する可能性を示唆した。

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