職場がオープンなWeb2.0を取り入れるのは必然か?エンタープライズ2.0時代の到来(1/3 ページ)

Web2.0を企業に取り入れることで、何か画期的な成果をもたらすと安易に考えるのは危険だ。この言葉がどこから出てきたのか、誰がどういう意図で使っているかを把握した上で、Web2.0導入のこれからを考えよう。

» 2007年08月23日 07時00分 公開
[大澤文孝,ITmedia]

エンタープライズ2.0はSOAの再来にすぎない

 エンタープライズ2.0は、「Ajax」「マッシュアップ」「RSS」「Wiki」「SNS」といった、俗にWeb2.0と呼ばれる要素を、企業に取り入れようとする考え方だ(関連記事参照)。しかしこのとらえ方では、「Webで流行しているものを、企業でも使おう」という漠然とした概念しか見えてこない。本質を理解するには、エンタープライズ2.0の技術的な側面や、導入によって何が変わるのかを知る必要がある。

 エンタープライズ2.0は、Web2.0の要素を企業に取り入れるものだ。しかし、これでは意味が分かりにくいし、そもそもWeb2.0という言葉自体があいまいだ。Web2.0は、ティム・オライリー氏の論文「What is Web2.0」で唱えられた用語だ。Web2.0は、特定の概念であり、特定の技術を示したものではない。したがって「ある種の仕様や要件を満たしているからWeb2.0である」というものではない。氏の論文ではさまざまな要素が挙げられているが、総じて言えば、Web2.0は「連携」を重視したものだ。「つながるWeb」とも言えよう。

 「つながる」という言葉には、「人と人」あるいは「技術と技術」がつながるという2つの意味がある。人と人のつながりは、WikiやSNSによるコミュニケーションを示す。技術と技術のつながりは、Webアプリケーションを単体ではなくWebサービスとして構成し、それをユーザーが組み合わせて使うことを示す。具体例として、Ajaxやマッシュアップなどがある。

 つながるという考え方は、エンタープライズ2.0というコンセプトが登場する前から企業システムに導入されていた。例えば、人と人の観点で見ればナレッジベースシステムが、技術と技術という観点では、SOA(サービス指向アーキテクチャー)によるシステム構築が挙げられる。SOAは、アプリケーションをサービス単位で構築し、それら全体を組み合わせる技法だ。サービスは単体でも動き、ユーザーは好きなものを組み合わせて利用する。ここから分かるように、エンタープライズ2.0を導入したからといって、何か画期的なことができるわけではない。

 「2.0」に対して「1.0」があることを思い出してほしい。この1.0は、今述べたナレッジベースやSOAによる企業システムだ。エンタープライズ2.0は、何か新しいことを期待させる響きを持つ。しかし惑わされてはいけない。この言葉を使っているのは、ナレッジベースやSOAを売り込んでいるベンダーということから分かるように、これらが発展したものにすぎない。

image 「ナレッジベース」「SOA」から「エンタープライズ2.0」へ
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ