「会社の息の根を止める」攻撃多様な脆弱性が存在する商用サイト(2/2 ページ)

» 2007年09月04日 07時00分 公開
[梅田正隆(ロビンソン),アイティセレクト]
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利用者と同じ動きをしながらサイト攻撃

 読者の中には「セキュリティツールで攻撃を防げないのか」と疑問に思う人もいるだろう。

 しかし公開されているWebサイトは、世界中の利用者から「HTTPリクエスト」を受け付ける仕組みになっている。

 HTTPリクエストとは、最も単純な例を挙げるとWebブラウザにURLを入力して実行ボタンを押すこと。これによって、クライアントとWebサーバとの間でコネクションが確立され、HTMLデータが送信されてWebブラウザ上にコンテンツが表示される。HTTPはインターネット標準のプロトコルであり、Web技術には欠かせない。

 厄介なのは犯罪者からの攻撃がこのHTTPリクエストで実行されるという点だ。正規のHTTPリクエストに紛れて攻撃が行われるため、ファイアウォールやセキュリティツールで捕捉することが困難で、通過してしまうのである。

 また、Webアプリケーションの脆弱性がWebサイトに固有のものである点も、問題の解決を難しくしている。それぞれのサイトに脆弱性が存在していることが、そのWebサイトの多くの利用者に知れ渡ることはほとんどない。同じように、脆弱性を突いてくる犯罪者も、脆弱性を管理者に修正されないよう、その存在自体を秘密にしておきたいのだ。

ほとんど進展ない脆弱性対策

 では、Webアプリケーションにどのような脆弱性が存在しているのか。セキュリティ大手のラックのコンピュータセキュリティ研究所は「コンピュータセキュリティ動向調査報告書 2006年上半期版」において、ほとんどの商用サイトがWebアプリケーションに何らかの問題を抱えていると指摘している。

 過去の傾向と調査時点の結果を比較しても改善が見られず、脆弱性への対策はほとんど進んでいないと報告している。

 同報告書で検出された問題の内訳を見ると、検出率の多い問題から順に「クロスサイトスクリプティング(およそ60%)」「認証、セッション管理の不備(同50%)」「セキュリティ上、好ましくない仕様(同50%)」「SQLインジェクション(同30%)」といった問題が見つかっており、こうした問題を同時に複数抱えている商用サイトが多いのだという。(図1)

検出されたWebアプリケーションの問題

 また、Webアプリケーションのセキュリティ向上を目指すコミュニティー「The Open Web Application Security Project(OWASP)」も、Webアプリケーションの脆弱性のトップ10をまとめた「OWASP Top10 2007!」を公表している。トップ10の上位を見てみると、第1位がやはり「クロスサイトスクリプティング(Cross Site Scripting)」、第2位が「インジェクションの欠陥(Injection Flaws)」、第3位が「悪意あるファイルの実行(Malicious File Execution)」。以下、「危険な直接的オブジェクト参照(Insecure Direct Object Reference)」「クロスサイトリクエストフォージェリ(Cross Site Request Forgery)」と続いている。これらの多くは、Web技術に欠かせない基本的な機能を利用しており、それだけに脆弱性は以前から指摘されてはいるが、根本的な解決はなされていない。「月刊アイティセレクト」10月号のトレンドフォーカス「続々と迫り来るボットの脅威から自社サイトをいかにして守るか」より)

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