「主役はアプリケーション」――Citrix CEO、XenSourceを含めた新たな戦略を語るCitrix iForum 2007 Report

「われわれのソリューションはシンプルだがパワーに満ち溢れている」――Citrixのマーク・テンプルトン社長兼CEOはこう語り、XenSourceの買収などで得た技術を活用した新たなアプリケーション・デリバリー・インフラストラクチャーについて語った。

» 2007年10月25日 00時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 「アプリケーションがなければインフラの意味がない」──アプリケーション・デリバリー・インフラストラクチャーを提唱するCitrix Systemsのマーク・テンプルトン社長兼CEOは年次ユーザーカンファレンスのオープニングキーノートでこう切り出した。

テンプルトンCEO 集まった4000人もの聴衆を前に、3つの戦略を説くテンプルトンCEO

 カジノでにぎわうネバダ州ラスベガスで米国時間の10月23日、「Citrix iForum 2007」が本格開幕した。会場となったマンダレイベイには、4000人ものパートナー、ユーザーが押し寄せた。

 「われわれが製品を提供できるのは、発明家の大きな役割がある」とテンプルトン氏。同社にとってとりわけ大きな発明となった「Citrix ICA」の生みの親であるブラッド・ピーターソン氏を紹介し、開発者に敬意を払うとともに、開発されたものを迅速に市場に提供するための投資やパートナーシップの重要性を説く。

 「ビジネスプロセスの中心はアプリケーション」とテンプルトン氏。この考えがアプリケーションデリバリーを推進する同社の根底にあるが、このアプリケーション配信を実現するためには、3つの方向性――すべてのアプリケーションをサービスとして提供すること、データセンターをダイナミック(動的)なものにすること、デスクトップ環境をサービスとして提供すること――が必要であると話す。

 特に、データセンターをダイナミックなものにする必要性を力説する。

 「今日のデータセンターは、アプリケーションのワークロード(作業負荷)とサーバが1対1、つまりハードコーティングされている」とし、この問題を解決するために仮想化環境の構築が有効であるという。

 しかし、x86サーバで仮想化されているものは現在9%程度であるとする米IDCの調査結果を示し、「(データセンターにおける)仮想化はビジョンの段階。煙は見えるが火元が見えない」と加熱する仮想化市場を冷静に分析する。

 そうした現状を打破するために、同氏は3つの戦略を掲げる。64ビットのハイパーバイザーの活用、ダイナミックな仮想化サービスの提供、プロセッサからアプリケーションまでに至るパートナーシップの拡充がそれだ。

 64ビットのハイパーバイザー、それを基盤とするダイナミックな仮想化サービスを提供しようとする際に、買収の完了をアナウンスしたXenSourceの存在が大きいとテンプルトン氏。ここで同氏は、オープンソースプロジェクト「Xen」の共同創始者であり、同プロジェクトのリーダーでもあるイアン・プラット氏を壇上に招き、プラット氏からXenハイパーバイザーの説明が行われた。プラット氏は近い将来、携帯電話などの組み込み分野でも仮想化が利用され、それぞれのプログラムが別々の仮想化環境で動作することで、さらなるユーザー体験が得られるだろうと話す。

プラット氏とテンプルトン氏

 テンプルトン氏は、さまざまなアプリケーションはそれぞれ構造的特徴を持ち、1つのアプローチでは解決できないことを理由に、複数のソリューションから構成されるアプリケーションデリバリープラットフォームの必要性を説明する。

 XenSourceが提供していたXenEnterpriseが名前を変えた「Citrix XenServer」がデータセンターをダイナミックなものにしていくと話し、それに加え、同社の主力製品であるCitrix Presentation Server(CPS)、NetScalerやWANScaler、Ardenceを買収したことで手に入れたOS/アプリケーション/データ配信のソフトウエア「Citrix Provisioning Server」、さらに2008年第1四半期に提供予定の「Citrix XenDesktop」を組み合わせることで、デスクトップの仮想化もカバーするアプリケーションデリバリープラットフォームが提供されることをデモを交えて説明した。

Citrix XenServerをコアに据え、データセンターをダイナミックにしていくとテンプルトン氏。「投資に対する見返りやコンポーネントの複雑性などからデスクトップ環境の配信はまだブレイクしていないが、Citrix XenDesktopの投入で、ユーザーは、常に同じデスクトップ環境を使用する場所やPCを選ばず利用できる。バーチャルなインフラの体制は整った」と話す

 パートナーシップの拡充も順調であるという。今回のiForumに合わせてDellでは、XenServerをプリインストールしたPowerEdgeを投入する発表を行い、HPもまた、同社のProLiant向けの電力管理ツールと、CitrixがCitrix Presentation Serverに搭載予定の電力量制御機能「PowerSmart」を組み合わせて利用できる旨の発表を行っている。そして、Microsoftもまた、自社製品とCitrixのWebScalerを組み合わせたアプライアンスを提供する計画があることを明かしている。

 「CATVでは、STBなどの受信機があれば、デリバリーコントローラからデリバリーされる番組を自由に視聴できる。われわれがアプリケーションデリバリーで実現したいことも基本的には同じこと。そこに、帯域の有効活用、(Citrix Presentation Serverに搭載される)SmartAuditor機能に代表される監査機能などのセキュリティ機構を加え、エンド・ツー・エンドのスタックすべてをカバーするアプリケーション・デリバリー・インフラストラクチャーを提供する」(テンプルトン氏)

「LANもWANもない。考えるべきはネットワークとアプリケーション」

 「われわれのソリューションはシンプルだがパワーに満ち溢れている」とテンプルトン氏。続けて、「革新とは既存の考えを変えること」とアプリケーション・デリバリー・インフラストラクチャーのさらなる躍進を聴衆に向けて確約した。

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