シマンテックCTO、仮想マシン対応ストレージ技術を紹介

シマンテックのバサント・ラジャンCTOは、同社のラボで開発した先端技術について紹介した。

» 2007年11月06日 21時55分 公開
[ITmedia]

 11月2日に開催された年次カンファレンス「Symantec Vision 2007」に合わせて来日したシマンテック インドCTOのバサント・ラジャン氏は11月5日、リサーチラボSRL(Symantec Research Labs)で開発中の仮想マシン対応ストレージや悪意コードの検出技術など、同社の先進技術について語った。

画像 バサン・トラジャン シマンテック インドCTO

 シマンテックの最新技術に基づくソリューションは、SRLから生み出される。ラジャン氏は「われわれは10億ドルの市場規模を見込める新製品開発を短期間に進めなくてはならない。そこで、ときに大企業でさえ実行できない、俊敏なスタートアップ企業の戦略を取り込むことが重要になる」と話す。このため、SRLでは独自の開発手法「アドバンスドコンセプト」を採用している。

 通常の新製品開発では、リサーチグループでプロトタイプを作ったり、関連技術を製品グループに移転させたりすることで製品がアウトプットされるが、アドバンスドコセプトでは、これらのグループ間に“新製品の間隙”と呼ぶグループを介在させる。いわばこれが社内のスタートアップ企業的組織に当たり、ここで第1世代の製品を作って複数のパイロットユーザーとともに試用、実際のビジネスに通用する俊敏性を備えさせようというのだ。

 こうして生み出された代表的なソリューションに、ストレージを効率的に利用するミドルウェア技術「VMAS」(Virtual Machine Aware Storage:VM対応ストレージ)がある。

 現在、ハードウェアのコスト削減や電気エネルギー節約、スペースの有効活用のために、多くのデータセンターで仮想マシン(VM)を導入し、最適化が進んでいる。その半面、物理マシン上に複数のVMを構築すると、例えば100台のVM利用時には、それぞれのOSやアプリケーションを格納するために数テラバイト規模のSANやNASが必要になるなど、集中管理型ストレージのコストが増大するという短所もある。

 そこでVMASでは、複数のVMで共通のファイルを全体で1つ格納し、異なるファイルだけVMごとに保存することで、ストレージを効率よく利用できるようにしたり、パッチの適用を共通のファイルにだけ行うようにして、運用管理の負荷を抑えることを実現した。

画像 VMAS。共通ファイルは1つだけ保持すればよいという

 また、SRLで開発を進めるVM対応バックアップソフトでは、「VMでもコンプライアンス上、バックアップが必要だが、開発中のシステムではVM1台ごとにリストアができる」(ラジャン氏)という。

 一方、セキュリティ分野で興味深い技術として、rootkitの検出と削除を行う「RAWディスクウイルススキャン」が挙げられる。これは、旧シマンテック/ベリタスソフトウェアチームの共同開発によるもので、ベリタスのボリューム管理技術を使ってファイルシステムを迂回(うかい)して直接ディスクのセクタ情報を読み取ることにより、rootkitの偽装を発見するソリューション。この技術は、シマンテックのウイルス対策エンジン開発チームに移され、企業/コンシューマー向けデスクトップセキュリティ製品に適用され始めている。

 また同氏によると、「レピュテーションベースシステム」の開発も順調という。このシステムは、数千万のシマンテックユーザーによる評価情報、例えば「ユーザーが何をもっとも多くダウンロードしたか」といった情報に基づいてマルウェアを検出する。「ユーザー数が少ない競合他社では太刀打ちできないだろう」(ラジャン氏)。eBayやAmazon.comでも同システムによる成果が報告されており、2008年初にリリースされるコンシューマー向け製品に実装される予定。

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