KGIとKPI――その意味、理解できていますか今日から学ぶCOBIT(3/3 ページ)

» 2007年12月07日 08時00分 公開
[谷誠之,ITmedia]
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成果の測定

 COBITは成果測定主導である。達成目標をちゃんと達成したかどうか、ということを常に測定することが求められる。もちろん、目標を達成していない、あるいは達成しそうにない場合は、費用や手段の妥当性に照らし合わせて改善していかなければならない。そのためにも、成果を測定するというのは大変重要なのである。

 COBITの非常に面白い点は、2つの成果測定指標を用いる点である。ちょっと難しいのだがとても大切な考え方なので、順に説明していこう。

 まずは2つの指標を説明する。

 1つは「重要目標達成指標(KGI:Key Goal Indicator)」で、これは目標が達成されたかどうかを「事後的に」把握するための測定指標である。誤解を恐れずに書けば、目標を達成したかどうか、振り返ってみなければ分からない指標である。

 もう1つは「重要成果達成指標(KPI:Key Performance Indicator)」で、これは達成目標の実現に向けた「現在の」実行状況を判断するための測定指標である。これも誤解を恐れずに書けば、目標を達成しそうかどうか、活動の途中で判断する指標である。

 大事なのはこの2つの指標の関連である。図4をご覧いただきたい。

図4:プロセスと達成目標、KPIとKGIの関係

 例えば、ビジネス目標として「企業の評判を向上させる」ことを挙げたとする。この目標を達成するためにITが支援する目標は「攻撃に対するITサービスの抵抗力・回復力の確保」である。

 さて、ビジネス目標を達成したかどうかの指標はいろいろあるだろう。ここには「企業の評判を傷つけるインシデントの件数」を挙げている。例えば四半期ごとに評価して、企業の評判を傷つけるインシデントの件数が○件未満であれば、企業の評判は向上したとみなす、ということだ。ここでは「企業の評判を向上させる」というビジネス目標に対するKGIは「企業の評判を傷つけるインシデントの件数」であると言える。

 一方、IT達成目標である「攻撃に対するITサービスの抵抗力・回復力の確保」がなされたかどうかを測定する指標は、ここでは「ビジネスに影響を及ぼすITインシデントの件数」を挙げている。期間内のITインシデントの件数が△件未満であれば「攻撃に対するITサービスの抵抗力・回復力の確保」が達成できた、とみなしましょう、ということだ。ここでは上記同様「攻撃に対するITサービスの抵抗力・回復力の確保」に対するKGIが「ビジネスに影響を及ぼすITインシデントの件数」だということになる。

 さて、ビジネス目標が達成されるためにはIT目標が達成されなければならない。つまり「企業の評判を向上させる」ためには「攻撃に対するITサービスの抵抗力・回復力の確保」がなされなければならない、ということである(もちろん、そういう関係になるように目標を設定する)。

 ということは、ビジネス目標を達成するためにはIT目標を達成しなければならず、IT目標の指標である「ビジネスに影響を及ぼすITインシデントの件数」が目標値である△件未満におさまりそうだったら、ビジネス目標も達成できるのではないか、と期待できる。つまりこの斜めの関係「ビジネス目標」と「IT目標の達成指標」との関係が、KPIなのである。

 ここまでの話を整理すると「企業の評判を向上させる」というビジネス目標に対するKGIとKPIは、以下のように言える。

  • KGI=「企業の評判を傷つけるインシデントの件数」
  • KPI=「ビジネスに影響を及ぼすITインシデントの件数」

 IT目標とプロセス目標との関係も、同じである。

 図4で示した、周りを取り囲んでいる4つの項目は、いわゆる「PDCA」サイクルに近い。

  1. 大きな目標を決め、それを達成するためのより小さな目標を定める
  2. それぞれの目標の達成度を測定する基準を定める
  3. 定めた基準にそって達成度を測定する
  4. 改善すべきところは改善する

 これを「ぐるぐる」回すことによって、企業のビジネス目標を達成し、ITがちゃんとビジネスを支援できている環境を整えましょう、という考え方なのだ。

"COBIT"とCOBITのロゴは、米国及びその他の国で登録された、ITガバナンス協会(IT Governance Institute 本部:米国イリノイ州:www.itgi.org)の商標(trademark)です。COBITの内容に関する記述は、ITガバナンス協会に著作権があります。本文中では、Copyright、TM、Rマーク等は省略しています。なお、COBIT及び関連文献はITGI Japan(日本ITガバナンス協会)のWebサイト(www.itgi.jp/download.html)を経由して入手することが出来ます。本連載の用字用語については、一部COBITにおいて一般的な表記を採用しています。

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