IT人材管理から学ぶ――「計画と組織」ドメインと10個のプロセス今日から学ぶCOBIT(2/6 ページ)

» 2008年01月22日 08時00分 公開
[谷誠之,ITmedia]
  • PO1 IT戦略計画の策定

ビジネス戦略およびビジネス上の優先順位に従ってIT資源の管理および割り当てを行うには、IT戦略計画の策定が必要である。IT部門およびビジネス部門の利害関係者は、プロジェクトおよびサービスのポートフォリオ(全体構成)から生み出される価値の最適化を実現する責任を有する。戦略計画を策定することにより、ITの利用機会および限界に対する主要な利害関係者の理解が深まり、現在の成果が評価され、必要な投資レベルが明確となる。ビジネス戦略やビジネス上の優先順位はIT戦略計画のポートフォリオに反映され、IT実行計画を通じて具現化されることになる。IT実行計画は、ビジネス部門とlT部門の双方から理解が得られ、承認を受けた簡潔な目標、計画、作業を定めたものである。

(要約) 何をおいてもまずはIT戦略計画を策定することから始めよう。利害関係者は、ITがビジネス戦略をどう支援するか、ちゃんと理解しておかなければならない。IT戦略が決まればIT実行計画を決めることができる。IT実行計画は、ビジネス部門とIT部門の双方の承認が必要である。

  • PO2 情報アーキテクチャの定義

情報システム部門は、ビジネス情報モデルを構築するのみならず、これを定期的に更新し、ビジネス情報を最大限に利用できるシステムを定義する必要がある。このビジネス情報モデルには、組織のデータ構文規則に従った企業データディクショナリ、データ分類体系、およびセキュリティレベルが含まれる。このプロセスは、安全で信頼性の高い情報を提供することを確実にすることにより、マネジメント層の意思決定の質を高める。また、情報システム資源をビジネス戦略に適切に合わせた合理的なものとする。このITプロセスにおいては、データのインテグリティおよびセキュリティに関する説明責任能力の強化のほか、アプリケーションおよび組織全体にわたる情報共有の有効性とコントロールの強化が必要である。

(要約) 情報システム部門は、ITを構築するだけじゃなく、定期的にレビューして更新しなければならない。そのためにはITに強いだけでなく、組織の横のつながりも大切にする必要がある。

  • PO3 技術指針の決定

情報サービス部門は、ビジネス部門を支援するために技術指針を定める必要がある。そのためには、技術インフラストラクチャ計画を策定する必要がある。また、製品、サービス、および提供手段に関して、技術が、どのような貢献ができるかについて、明確かつ現実的な見込みを立て、これを管理するアーキテクチャ委員会を設置しなければならない。技術インフラストラクチャ計画は定期的に更新されなければならず、システムアーキテクチャ、技術指針、調達計画、標準、移行戦略、および緊急時対応などの観点を含むことが必要である。これにより、プラットフォームとアプリケーションとの間の相互運用性の改善、競争的な環境における変化へのタイムリーな対応、および情報システム要員の確保と投資におけるスケールメリットを実現できる。

(要約) 情報サービス部門は、ITがビジネスをどう助けるかを考えつつ、具体的な技術提供の手段を考えて、その技術の有効性や効率性を利害関係者に説明しなければならない。そのための仕組みや組織を作り、改善と説明を日々怠らないようにしなければならない。

  • PO4 ITプロセスと組織及びそのかかわりの定義

IT組織の構築では、人材、スキル、機能、説明責任、権限、役割、実行責任、および監督に関する要件を考慮することが必要である。透明性とコントロールを確保し、マネジメント層とビジネス管理部門の関与を確実にするために、ITプロセスフレームワークに、IT組織を組み込まなければならない。企業の戦略委員会は、取締役会を通してIT部門の監督を徹底させなければならない。さらにビジネス部門とIT部門が参加する1つ以上の運営委員会が、ビジネス上の必要性に応じて、IT資源の優先順位を決定する必要がある。プロセス、管理ポリシー、および手続が、組織内のすべての機能のために、整備、運用される必要がある。その際には、コントロール、品質保証、リスク管理、情報セキュリティ、データとシステムのオーナシップ、および職務の分離に、特に留意することが必要である。ビジネス要件にタイムリーに対応するため、関連する意思決定プロセスにはIT部門も参加する。

(要約) IT組織にはITの専門家だけではなく、マネジメント層やビジネス管理部門、ひいては取締役会の積極的な参加が必要不可欠である。同様に、ビジネスに関する意思決定のプロセスにはIT部門の積極的な参加が重要である。

  • PO5 IT投資の管理

費用、便益、予算内での優先順位、正式な予算編成プロセス、および予算に照らした管理が組み込まれたフレームワークを構築および維持し、IT関連の投資プログラムを管理する。利害関係者と協力し、IT戦略計画および実行計画の枠内で総費用と便益を特定およびコントロールし、必要に応じて是正措置を講じる。このプロセスにより、ITとビジネスの利害関係者間の協力関係が促進され、IT資源の効果的かつ効率的な使用が可能になる。さらに、オーナシップにおける総費用についての透明性と説明責任が確保され、ビジネス上の便益およびIT関連の投資からの収益の獲得が可能になる。

(要約) IT投資が効果的であったか、利害関係者は満足しているか、費用対効果は適切であったか、といったことは日々管理し、利害関係者に説明される必要がある。そうすれば利害関係者はよりITを理解し、協力的になってくれるだろう。

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