課題設定力と渇望感がビジネス成長を支える日本のインターネット企業 変革の旗手たち(1/3 ページ)

昨年創立10周年を迎え、楽天はさらに事業領域を拡大させる。ネットにビジネスの礎を築いたパイオニアの、そのビジネス創出の源泉は常に手の届かないところに目標を定めようとする企業文化だった。

» 2008年01月08日 00時00分 公開
[堀見誠司,ITmedia]

 楽天が1997年に設立されて、昨年で10周年を迎えた。同社は創業以来EC事業を中核に、ポータル、トラベル、金融、国際事業などそのフィールドを年々拡大し、インターネット業界のパイオニアとして、常に新しいサービスにオリジナリティーを加えて挑戦してきた。現在では、グループ会員数が4000万人を突破、グループ流通総額も年換算すると1兆円超と、この10年でその創業当時誰もが予想しなかった成長を遂げている。同社取締役常務執行役員 CPO開発・編成統括本部長兼プロデュース本部長の杉原章郎氏にその成長の原動力について聞いた。

画像 楽天取締役常務執行役員の杉原章郎氏

ITmedia ネットでビジネスを展開するきっかけは何だったのでしょうか。

杉原 1997年に楽天はスタートしていますが、1996年ごろから当時コンサルティング業を行っていた三木谷(社長)を中心として、ネットビジネスの可能性を探り始めました。当時は企業のホームページの作成請負やLANにインターネット接続を加えた通信環境の配備など、BtoBのビジネスが主でした。しかしBtoBというのは、システムが完成して納品してしまうとそこでおしまい。その先のソリューションビジネスが続かないケースが多かったのです。

 そこでもっとコンシューマー寄りの、BtoCのビジネスを、ということでECなどを視野に入れました。結果的に、当時はあまり活気がなかったインターネットのショッピングモールを中核に「何かソリューションを提供できると面白いのでは?」と考えて『楽天市場』を興したわけです。

 ビジネス領域をインターネットに絞ったのは、インターネットを使った何かがしたいという気持ちがわれわれの中に強くあったこともありますが、やはりインターネットが、時間や場所の人手の制約を超える可能性を秘めているという確信が当時からあったからだと思います。

ITmedia 楽天は現在、総合インターネットサービス企業として、ECを中心にポータル、金融、リサーチなど、事業領域がかなり広範囲にわたっていますが、改めて楽天の企業としての強みはどこにあるとお考えですか。

杉原 楽天創業以来、一貫して掲げている、Get things done、Professionalismの徹底、顧客満足度の最大化、スピードなどをうたった「成功の5つのコンセプト」があります。このコンセプトを突き詰めると、世界一のインタネットサービス企業になるのです。

 ショッピングモールからスタートしたビジネスも、EC、トラベル、金融と領域を広げるとともに、そのステージが大きく変化していきました。最近では、人材系の事業など人が一生を決める場面にかかわるところまですそ野が広がっています。このようにビジネスが多様化してもなお変わらないのがこのコンセプトです。これにのっとって仕事をすれば、どのようなビジネスシーンでも、最良のサービスが提供できるはずだと考えています。このような姿勢が魅力的な人材、育成を可能にし、楽天の強みにもなっていると感じています。

技術情報のオープン化を進める

ITmedia 10周年を期に、テクノロジー面でも何か新しい動きがありますか。

杉原 この10周年を期に、楽天の技術情報をオープン化する動きがあります。決してクローズにしていたわけではなく、公開する価値のある/ないを含めて、あまり積極的に自分たちの技術をアピールしてこなかったというのが実情です。楽天が採用する技術というのは、多くの方に利用していただくのを前提に開発されるため、非常に熟した技術です。ある程度、汎用性が見込めるようになった時点で一気に実用化、サービスへと推移してきました。

 外部の方に楽天を支えるシステムを見ていただき、仕様の策定・決定から開発のコントロール、リリース後の運用に至るまですべて社内で行っているというお話をすると、非常に驚かれます。このような内情を外部にはなかなか知ってもらう機会がなかったという反省も含めて、楽天が提供する技術を応用し、新たなソリューションを展開する動きを活性化するよう、積極的な技術情報のオープン化を検討しています。特に、Rubyを皮切りにご協力いただいている松本行弘(まつもとゆきひろ)氏をはじめ、楽天フェローの方々にもこうした技術情報は積極的に開示すべきだとのご指摘を受けています。

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