オンデマンドサービスの障害は「新常識」?

「オンラインサービスで小さな障害が起きるのは当たり前。情報の送信は保証されない」――SaaSユーザーはこのような心構えを持つ必要がありそうだ。

» 2008年02月15日 15時49分 公開
[Renee Boucher Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 米Salesforce.comは今週、ユーザーの一部をSpring'08リリースに移行した。その際、2月11日にNA5サーバで障害が起き、およそ7時間にわたって断続的に問題が続いて少数の顧客が影響を受けた。

 同じ日に、BlackBerryユーザーは、電子メールと予定表サービスに接続しようとしてもつながらない状態が数時間続いた。障害の原因は正確には分かっていないが、ここで言えるのは、BlackBerryのようなオンデマンドサービスは予想外のダウンタイムに影響されやすいということだ。

 断続的なシステム障害が起きたところで、ほとんどのユーザーにとってはこの世の終わりというわけではない(もっとも、そのときは世界が終わったように思えるかもしれないが)。だが少なくとも当面は、小規模な障害はオンデマンドサービス利用者にとって当たり前のものになるだろう。

 Google CalendarとApple iCalを同期させるサービス「Spanning Sync」の開発者チャーリー・ウッド氏は、Google Calendar Data APIを1日に約1000万回呼び出す。

 「ほとんどの人は、Google Appsに頻繁につながらなくなることに驚くだろう」と同氏は言う。「Salesforce.comやBlackBerryのような大規模な障害ではなく、小規模だ。少数のユーザーが15分ほど影響を受ける。非常に分散していて、1日中見られる。こうした少数のユーザーに影響する小規模な、通常は短時間の障害が常に起きている。当社はバックエンドのユーザーを同期化しており、どこかで障害が起きても、10分後には別の呼び出しが成功する」

 ウッド氏は、Googleはこの問題を認識しており、Googleアプリケーションの可用性向上に向けて「本当に懸命に」努力していると語る(Google Gearsのデベロッパー啓発担当者に電話したが、回答はなかった)。

 実際、ほとんどのSaaS(サービスとしてのソフトウェア)提供会社はダウンタイムの問題を認識しており、顧客に99.999%のアップタイムを保証するために多額の資金を投じている。

 Salesforce.comは2005年にデータセンターの増築に5000万ドルを費やし、顧客情報をリアルタイムで複製することでできるだけ100%に近いアップタイムを実現した。だがそこまでやっても問題は発生した。Salesforce.comの顧客は2006年に数時間にわたる障害を経験した。マーク・ベニオフCEOは、これはデータセンターのアップグレードによるものだと説明した。

 以前Salesforce.com向けの同様の同期化プログラムを提供していたウッド氏にとって、重要なのはAPIが時々機能しなくなることではなく、障害が小規模であり、長い目で見れば使えるということだ。

 「新たな常識だ。人々がこれから理解しなければならないのは、情報の送信が保証されないのはWebの性質であり、インターネットの本質であるということだ。データが届く可能性は高いが、保証はない。Webページにアクセスして表示されなかったら、リフレッシュするとページがリロードされる。オンラインアプリケーションに関しても、ユーザーはそうした状況に慣れなければならないだろう。(こうしたサービスに)期待することをある程度変えなければならない」(同氏)

 では、オンデマンドアプリケーションの顧客はどうすればいいのだろうか? ウッド氏は、データをオンラインに置く場合はバックアッププランを用意する必要があると言う。「従来型の自社運用アプリケーションを使うのは、車を持つようなものだ。オンデマンドはタクシーに乗るようなものだ。タクシーを使ったときは乗った分だけお金を払うが、保険やメンテナンスの費用は出さない。常にタクシーを捕まえられるかどうかは分からない。だが電話があれば、ほかのものを手配できる。アプリケーションも同じだ」(同氏)

 ユーザーがオンデマンドサービスに期待してもいいアップタイムはどのくらいかとの質問に、Beagle Researchのアナリスト、デニス・ポンブライアント氏は、「期待」がキーワードだと答えた。「この先、皆が期待するのは、オンデマンド技術が電話システムと同じくらいの信頼性を持つことだ。電話システムはたいていの場合、ダウンしない。狭い地域で障害が起きる――どこかで回線が1本ダウンする――可能性はあるが、電話システムはダウンしない」

 だが、125年の歴史を持つ電話システムと比べると、SaaSはまだ乳児期にあり、改良を続けなければならないとポンブライアント氏は言う。

 「いずれアップタイムは向上すると期待していいが、われわれは動いている的を狙っているので、小さな問題が継続的に起きることは覚悟するべきだ」と同氏。「これは単なるSaaSではない。アプリケーションを構築し、ホスティングしているパートナーもかかわる複数の層のSaaSだ。グローバルな事業であり、多数のパラメータがある。一番いいのは障害がないことだ。その次が小さな障害だ」

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