「冷却」から考えるグリーンIT目指せ電力消費削減(1/2 ページ)

サーバコンピュータをはじめとするハードウェアの進化は、性能の向上の一方、今日のデータセンターに多くの課題をもたらした。中でも深刻なのが発熱を抑える「冷却」に関する課題だ。

» 2008年03月27日 08時00分 公開
[敦賀松太郎,ITmedia]

データセンターが直面する「冷却」の課題

 膨大な電力を消費するデータセンターだが、その電力が最も多く使われているのはどこだろう。そう問われると、高性能化したサーバコンピュータやストレージ、ネットワーク関連などのIT機器を思い浮かべる。しかし、実際にはデータセンターに供給される電力を最も多く消費するのは、IT機器ではなく冷却設備なのだ。

 例えば、ヒューレット・パッカード(HP)は、データセンターの消費電力のうち約66%が冷却に利用されるという調査結果を公表している。また、UPSのトップベンダー、APCによると、データセンターで消費される電力のうち、約45%が冷却・空調装置、約25%が電源・照明に使われ、IT機器が使うのは約30%だという。

 現在、データセンターを中心として、消費電力を削減することで発電時に発生する二酸化炭素排出量を削減し、地球環境に貢献する「グリーンIT」がトレンドになっている。消費電力比率が最も高いのが冷却ならば、冷却を効率化することこそが、グリーンITを実現するための第一歩だと言える。

 そのため、ベンダー各社は冷却の課題を解決するさまざまなソリューションの開発に取り組み始めている。以下、各社が提供するデータセンターソリューションの一部を紹介しよう。

熱い部分を閉じ込めて冷却

 データセンターには、IT機器を格納したラックが並べられている。IT機器は高温の状態のままにしておくと誤作動や故障の原因になるため、ヒートシンクや冷却ファンによって常に熱を放出する仕組みになっている。IT機器から排出された熱は、データセンターの室内全体に拡散していく。そこで従来のデータセンターは、室内温度を常時20℃程度に保つために、強力な空調設備を用意してきた。

 ところが、IT機器が高性能、高密度の一途をたどるにつれて発熱量も急増し、従来の空調設備では定温に保つことが困難になりつつある。より強力な空調設備を導入するには、データセンターを改装、改築しなければならないこともあり、莫大な投資が必要になってしまう。むろん、冷却できないからと言って、データセンターの情報処理能力が陳腐化するまま放置することはナンセンスな話だ。

 そうした差し迫った冷却の課題を解決するためのソリューションの1つとして注目されているのが、APCの冷却システムである。この冷却システムの特長は、室内全体を冷却するのではなく、ラックの列単位で冷却することにある。

 IT機器の熱は、冷却ファンによってラックの背面から排出される。つまり、データセンターの室内温度が最も高いのは、ラックの背面ということになる。この熱の通路となる部分(これをAPCでは「ホットアイル」と呼んでいる)を囲ってしまえば、高温の排気が室内全体に拡散することはなく、排出された高温の空気とIT機器に供給される冷気を完全に分離することができる。冷却にとって、熱が混じってしまうことが最も非効率的だから、熱い部分だけ閉じてしまうというのが、ラックの列単位によって冷却するというAPCの冷却システムの考え方なのだ。

 この冷却システムを採用すれば、ホットアイルの排熱を冷却する設備を用意するだけで効率的な冷却が可能になる。室内全体を強力に冷却する必要はなくなるので、既設の空調設備の消費電力を削減できる。ラックの列単位による冷却システムを導入、標準化すれば、必要に応じて拡張可能になるのも、大きなメリットだ。

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