「内部統制報告制度に関する11の誤解」にツッコミを入れてみたITIL Managerの視点から(2/2 ページ)

» 2008年04月02日 08時00分 公開
[谷誠之,ITmedia]
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 そもそも内部統制の目的は、「うちの会社はありとあらゆる面において健全ですよ」ということをアピールすることである。法令を順守しているとか、利益を上げているとか、社員が健康で幸せに働いているとか、適切に投資をしているとか、お金の無駄遣いをしていないとか、危機管理がちゃんとできているとか、さまざまな面に及ぶのだ。一方、組織が健全であるということを誰のためにアピールするか? というと、それは取りも直さず株主、顧客、そして社員のためである。株主と顧客と社員を安心させるための内部統制である、ということを忘れてはならない。

 これは本来、法律ができるから対応しましょう(法律がなければやらない)、ということではないはずだ。企業が自らの健全性をアピールすることは、企業の存続性を考えても、社会的責任を考えても当然のことである。しかし残念ながら、日常の業務に追われ、健全性をアピールするための根拠となるデータを収集したり、まとめたりする作業ができていないのが現実だろう。そのためのツールも導入されていないことのほうが多い。さまざまな理由で、風通しの悪い(情報が行き渡らない)社風になってしまっている企業も少なくないだろう。

 結局のところ、内部統制に必要不可欠なのは、「組織体制」「プロセス・仕組み」「ツール」である。最も重要なのは組織体制なのだが、大会社ほど組織体制を根底から変えるのは困難を極める。そこで、とりあえずはプロセスとツールを導入して内部統制に備えましょう、ということになる。

指標が明示されないことによる、ねじれ現象

 問題は「どこまでやれば必要かつ十分なのかが分からない」ことだ。個人情報保護法が施行されたときもそうだった。個人情報をどこまで守ればよいか、誰もその具体的な指標を示すことができなかったのだ(弁護士さえも)。その結果、病院の待合室で患者の名前を呼ばない(番号で呼ぶ)と決めたり、入院患者を見舞いに来た人に病室を(入院しているという事実さえも)かたくなに教えなかったりといったねじれが生じてしまった。

 今回の内部統制にも、同じようなことが言えるのではないだろうか。ベンダーがこの機に乗じて企業の不安を駆り立てている、とまでは言わないが、ベンダーさえも「どこまでやっていいか分からない」のが本音のはず。自社のツールを強引に内部統制に結び付けて売っている例もあるだろう。これでは、健康食品メーカーが必要以上にダイエットを勧めるようなものだ。

 では、どこまでやれば「必要かつ十分」なのだろうか。もちろん企業の規模や事業内容によってもまちまちだが、何らかのヒントはあるはずだ。今回の考察を踏まえ、「内部統制報告制度に関する11の誤解」にツッコミを入れつつ、ITIL的に「組織」「プロセス」「ツール」について考えてみたい。

谷 誠之(たに ともゆき)

IT技術教育、対人能力育成教育のスペシャリストとして約20年に渡り活動中。テクニカルエンジニア(システム管理)、MCSE、ITIL Manager、COBIT Foundation、話しことば協会認定講師、交流分析士1級などの資格や認定を持つ。なおITIL Manager有資格者は国内に約200名のみ。「ITと人材はビジネスの両輪である」が持論。


※本記事は、連載記事(全3回)の第1回目となります。

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