「内部統制報告制度に関する11の誤解」を誤解せぬよう読んでみたITIL Managerの視点から(4/4 ページ)

» 2008年04月08日 08時00分 公開
[谷誠之,ITmedia]
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4.中小企業でも大がかりな対応が必要か


[誤解] 米国では、中小企業に配慮する動きがあるが、日本では、中小企業も大企業と同様の内部統制の仕組みが必要である。

[実際] 上場会社のみが対象、かつ、企業の規模・特性などの中小企業の実態を踏まえた簡素な仕組みを正面から容認。

(具体例)

・職務分掌に代わる代替的な統制

マンパワーが不足している場合などには、経営者や他の部署の者が適切にモニタリングを実施することで可。

・企業外部の専門家の利用

モニタリング作業の一部を社外の専門家を利用して実施することが可能。


内部統制報告制度に関する11の誤解(リンク先はpdfファイル)より


 内部統制報告書の作成が義務付けられる会社は、金融商品取引法によれば、大ざっぱに言うと「有価証券報告書を提出しなければならない会社」とういうことになっている。具体的には、株券や債権を使って1億円以上の資金調達をする会社や、株式を証券取引所などに上場や公開している会社が対象となる。そう考えると、いわゆる「上場企業」だけが対象となるようだ。しかし「上場企業=大企業」ではないことは言うまでもない。社員100人程度の上場企業だってあるし、上場企業の連結子会社たる中小企業だって対象となる。

 つまり、「簡素な仕組みを正面から容認」の具体例が適当でないのだ。

 「マンパワーが不足している場合」、つまり内部統制なんて構っていられないような場合に、「経営者や他の部署の者が適切にモニタリング」できるわけがない。ITILでも、人手が不足しているような場合に、構成管理マネージャと変更管理マネージャ、リリース管理マネージャを1人が兼務する可能性を示唆しているが、それはあくまでも可能性であって望ましい状態ではない。また、実行責任者とモニタリング実施者が同一人物であるという事態が起きてしまい、内部監査が形骸化してしまう可能性だってあり得る。

 「モニタリング作業の一部を社外の専門家を利用して実施する」ほうがまだ現実的と言えるだろう。しかしこちらにも2つの問題がある。1つは「社外の専門家」が本当に専門家であるという証明をしなければならないという点である。モニタリング実施者が「自称・経営コンサルタント」みたいな人でも構わないのだろうか。最低でも内部統制について何らかの勉強をした人、例えばCOBITやITILの資格を持っている人や、会計士、会計監査人といった人でないと、適性ではないだろう。もう1つは、そういった人はどうしてもギャラが高くなる傾向にあるという点である。間違いなく、企業のコストの負担が増大してしまう(続く)。

谷 誠之(たに ともゆき)

IT技術教育、対人能力育成教育のスペシャリストとして約20年に渡り活動中。テクニカルエンジニア(システム管理)、MCSE、ITIL Manager、COBIT Foundation、話しことば協会認定講師、交流分析士1級などの資格や認定を持つ。なおITIL Manager有資格者は国内に約200名のみ。「ITと人材はビジネスの両輪である」が持論。ブログ→谷誠之の「カラスは白いかもしれない」


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