Yahoo!買収を断念――Microsoftの真意とはWeekly Memo(1/2 ページ)

Microsoftが3日夜(日本時間4日午前)、3カ月にわたって交渉を続けてきたYahoo!に対する買収提案を撤回すると発表した。MSの真意はどこにあるのか。

» 2008年05月07日 09時39分 公開
[松岡功ITmedia]

「追い込めなかった」Microsoft

 「マイクロソフト、ヤフー買収を断念」――5月5日付けの日本の新聞各紙は、一斉にこのニュースを一面で取り上げた。中でも毎日、日経の両紙はトップ扱いに。遡って2月2日付けの各紙一面トップで「買収提案」が報じられてから3カ月。メディアを賑わせた注目の買収劇は、成就しないまま幕を閉じることになった。

Microsoftのスティーブ・バルマーCEO(中央)

 交渉の経緯やMSが買収を断念した理由についてはすでに詳細に報道されているので、ここでは割愛するが、ネットメディアの速報を見て筆者が直感的に思ったことと、幾つかのメディアの解説記事にも触れられていた共通の見方があるので書き留めておきたい。

 それは、MSはまだYahoo!買収を完全にあきらめていないのではないか、ということだ。幾つかのメディアの解説記事でも、今回の断念表明でYahoo!株価が急落して経営が混乱した場合、MSは再び買収に乗り出す可能性がある、との見方が示されているが、それもさることながら筆者はむしろ、MSの今回の幕の引き方に注目した。

 どこに注目したのか。結論から言うと、MSはYahoo!を必要以上に追い込まなかった。報道されている限りの情報では、その理由におけるMSのスティーブ・バルマーCEOの発言には、自社の株主や従業員への配慮とともに、Yahoo!に対しての本音を精一杯込めたように感じられる。

 その本音とは、MSの買収提案に対抗してYahoo!が採ったGoogleとの提携戦略に対する強い懸念だ。これにはバルマーCEOもショックを受けたというより、がっかりしたのではないだろうか。この懸念や買収戦が長引いた場合のYahoo!の人材流出を恐れて、MSは追い込まなかったのではなく「追い込めなかった」ともいえる。が、敵対的買収をちらつかせながらも期限を切って買収金額の詰めの交渉をトップ同士で行うところまで行き、最後は本音もぶつけて自ら身を引いた。その潔さに、「次にもまたチャンスはある」とのMSの真意を感じるのは筆者だけだろうか。

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