NTT東西は3月末にNGNの商用サービスを開始した。皮肉交じりに「スモールスタート」ともいわれるが、今後企業はNGNをどのように使うのか。NRIの藤吉氏に話してもらう。
NTT東西は2008年3月末、次世代ネットワーク(NGN、NextGenerationNetwork)の商用サービスを開始した。NGNを用いた新サービスはブロードバンドサービスの「フレッツ光ネクスト」をはじめ、IP電話サービスの「ひかり電話」「ひかり電話オフィスタイプ」、セキュリティ対策サービスの「フレッツ・ウイルスクリアv6」、法人向けサービスの「ビジネスイーサワイド」「フレッツ・VPNゲート」、映像配信事業者向けサービスの「フレッツ・キャスト」「地上デジタル放送IP再送信事業者向けサービス」である。
ITU-T(国際電気通信連合の電気通信標準化部門)におけるNGN標準化活動の開始やNTT中期経営戦略(2004年11月)でのNGNへの対応が表明されて以来、NGNは通信業界の注目の的である。ITU-Tが定義した「ユーザーはサービスプロバイダーを自由に選び、事業者はユビキタスなサービスを実現できる」という壮大なフレームワークが示すように、NGNはユビキタス社会を実現する重要なネットワークインフラとなる。
一方で、2008年3月にNTT東西のNGN商用サービスで実現したのは上記のようにごく一部である。料金体系も申し込み受付直前になるまで公表されないなど、慎重に慎重を重ねた上での「スモールスタート」であると感じた方も多いだろう。
NGNは、通信キャリアが過去に築いてきた電話の歴史と決別し、新たな時代へと移行する通信キャリアの「次世代」を担うネットワークである。「NGNは情報通信革命のジャンヌダルクではない」が示すように、今後収益増の見込みが難しい音声通話サービスのためだけに基幹網と通信機器を維持していては、通信事業者としての競争力そのものが低下してしまう。
NGNは、汎用技術のIPを利用してコスト競争力が高いネットワークを構築し、固定電話機のみならず携帯電話機、テレビなどの家電やデジタルサイネージ(屋外電子広告)やセンサーなど、各種端末に対してさまざまなサービスを提供できる。
NGNではITサービスと通信ネットワークが完全に分離したインターネットでは実現が困難なアプリケーション、例えば通信品質(帯域など)の確保やネットワーク加入IDに基づいたサービスの連携、セキュリティの強化が可能である。すなわちNGNでは通信とITが融合した新しいアプリケーションやサービスが開発可能となり、通信キャリアのみならずプロバイダーやユーザー企業にも新たなビジネスチャンスを与えてくれる。(図1)
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