プログラマーの後輩として、どのようにプログラミングを学ぶべきか――わたしの下に届いた1通のメールにはいろいろと考えさせられるところがあります。
先日、見ず知らずの方からメールをいただきました。プログラマーの後輩として、どのようにプログラミングを学べば良いか尋ねる内容です。以下、引用します。
はじめまして。
僕は、今15歳です。
僕は、コンピュータにとても興味があり、近い将来、ITにかかわる仕事がしたく、まつもとさんのような超優秀なプログラマーになりたいと思っています。そこで、いまからITについて猛勉強しようと、いろんなWebサイトを見て回りましたが、何しろ情報量が非常に多く、かえって混乱してしまいました。そこで、ご質問なんですが、具体的にどのようなことから勉強を始めればいいですか。それから、入門に適切な書籍やWebサイトなども紹介していただければ幸いです。
お忙しいでしょうが、お返事をお待ちしております。
わたしごときが「超優秀なプログラマー」と呼ばれるのは気恥ずかしいのですが、若い人がプログラミングに対して真剣に向き合おうという姿勢はとても頼もしく感じました。
考えてみると、わたしの若いころと現在の若者とでは周囲の状況がまったく違います。わたしは、ちょうど彼と同じころにプログラミングを始めましたが、そのときに使っていたのはシャープのポケコン*で、400ステップのBASICプログラムを実行するのがやっとでした。
あのころはインターネットというものはありませんから、情報の入手先も主に雑誌と書籍だけです。雑誌に載っているプログラムリストを必死に入力して、動かしては悦に入っていたことを覚えています。主にゲームでしたが、文字がピコピコ動く程度のかわいいものでした。
それに比べると、いまの若い人たちは大変恵まれた環境にいます。世間にはコンピュータがあふれていますし、情報はインターネットからいくらでも入手できます。また、ゲームは昔に比べると超高速のマシン上で素晴らしい品質のものが遊べるようになりました。
しかし、プログラミングに興味がある人は以前よりも減ってしまったようです。現代ではIT技術が進歩しすぎて、コンピュータを使うことと、プログラミングが分離してしまっているのかもしれません。
傑作SF作品である『宇宙船ビーグル号の冒険*』の1エピソードでは、非常に優れた文明が、衛星も近くの惑星もないため、段階的に発展できず、恒星間航行の技術を発明することなく滅んでしまいます。コンピュータの発達期に少年であったわたしたちは、自分自身の成長に応じてコンピュータが発展してきました。しかし、いまの若者が「ファイナルファンタジー」を見て自分で作ろうと思っても、実現させるのはほとんど不可能*ではないでしょうか。
シャープ製ポケットコンピュータ「PC-1210」。1980年に発売された、シャープ製BASIC内蔵ポケットコンピュータの第1号。これでプログラミングにはまった業界人は多いと聞く。
A・E・ヴァン・ヴォークト著/沼沢洽治訳、「宇宙船ビーグル号の冒険」、東京創元社、ISBN4-488-60901-5。
しかし、技術の進歩によってフルCGアニメをほぼ1人で作成した「ほしのこえ」(制作:新海誠)や「惑星大怪獣ネガドン」(監督:粟津順)のような例もあるので油断はできない。
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