エンド・ツー・エンドで活用できる環境を――コグノス買収後のIBMのBIBI特集(1/2 ページ)

IBMのBI戦略を見てみると、ユーザー企業が求めるニーズが透けて見えてくる。それは低コストで他のシステムと自由に連携するエンド・ツー・エンドのBI環境だ。

» 2008年06月10日 07時37分 公開
[村上敬,ITmedia]

多様化・点在化している情報を自由に活用

 昨年11月、IBM がBIベンダーのコグノスを買収する正式契約を締結した。買収金額は約 50 億米ドル。手続きは2008年度第1四半期に完了した。今回の買収は、2006年2月に発表された IBM の「インフォメーション・オンデマンド( 以下、IOD )」戦略の一環として行われた。IBMは、これまでIOD戦略に沿っていくつかのソフトウェアベンダーを買収しており、コグノスもその一貫である。BI専業のトップベンダーを買収することによって、IODはいったいどのように進化を遂げるのだろうか。

 まずIODについておさらいしておこう。企業が扱う情報は、年々、量的に増大するとともに形態も多様化・点在化している。このような環境のなかでさまざまな形式のデータを情報として有効活用するには、必要な情報を、必要な人・アプリケーションが、必要な時に、必要な形で自由に活用できる環境を整えなくてはいけない。その環境を実現するIT基盤のビジョンがIODだ。

 IODの考え方は、アプリケーションの仕様にあわせて利便性を高めるために、データをどのような形で扱わせるか、という点に尽きる。従来、受発注データは受発注システム、請求データは請求システムが管理し所有するというように、データはそれを生成するアプリケーションと密接な関連を持ち、アプリケーションとDBとが一対一的な対応になっていた。IODでは、この状態から脱却して、物理的統合や仮想的統合により、アプリケーションが自由にDBを参照できる環境を作る。

 もちろん以前から、情報系システムに代表されるように、データを所有するアプリケーション以外からのデータ利用の需要はあった。しかし、それはデータウェアハウスの技術によってリアルタイム性の低い一部のエリアのデータを物理統合していたに過ぎない。あくまでも、必要なときに必要な情報を、というのがIODの基本コンセプトだ。

 では、IBMはIOD戦略に則った企業のBI環境を、どのようなソリューションで実現してきたのか。日本IBMのソフトウェア・マーケティング プロダクト・マーケティング・マネジャーの村田泰昭氏は次のよう語る。

「機能集約されたシームレスな連携がポイント」と語る日本IBM村田泰昭氏

 「IBM Information Management softwareは、大きく3つに分かれています。まずデータベースのエンジンそのもの、2つめとしてコンテンツ管理、3つめとして情報統合です。BIという点では、データベースにさまざまな機能を取り込み、情報の分析を行っていただくというソリューションを展開していました。例えば『DB2 Data Warehouse Edition』という製品は、DWHアプリケーション基盤からOLAP分析、データ・マイニングなど、情報系システムに必要な機能をひとまとめにして提供。必要な機能を集約し、シームレスな連携ができるよう設計されているので、データウェアハウスやデータマートの構築・開発・運用・活用を効率的に、短期間かつ低コストで実現できます」

 BIをワンパッケージで提供するとはいえ、IBMに強みがあるのは、やはりミドルウェアに近い部分だ。

 「当社のBIソリューションを大きく見渡してみると、データベースエンジンや、きれいなデータにしたり、分断されていたデータを統合するといったミドルウェア的なものが中心。いわゆるBIツールもあったものの、整理した情報をお客様に具体的に使っていただく部分は本格的に展開していませんでした」

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