次はCRM 2.0顧客無視もアリ(3/3 ページ)

» 2008年06月18日 15時47分 公開
[Dave Greenfield,eWEEK]
eWEEK
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熾烈な競争

 Salesforce.comとOracleは総合的なCRMエコシステムを提供しているが、Communispace、MarketTools、Think Passengerといった中小ベンダーは、企業が顧客と効果的に意志疎通するのに役立つソリューションを提供している。これらのベンダーの顧客コラボレーションアプリケーションは、Jive Software、Lithium Technologies、Prospero Technologiesなどのベンダーが提供するソーシャルネットワーキングアプリケーションと組み合わせて利用すれば、顧客同士が互いの問題を解決することが可能になるため、サポートコストの削減につながる。

 これらの顧客コラボレーションアプリはいずれも、Salesforce.comの製品のようにアイデアを推進するためのDiggのような機能を提供しないが、同様の市場セグメントに狙いを定めている。

 Salesforce Ideasと直接競合する技術を提供しているのが、独自のアイデア作成/クラウドソーシング技術のプロバイダーのSpigitだ。Salesforce Ideasと同様、Spigitでは参加者がアイデアを昇格/降格させることができる。しかしSpigitには、参加者に対する評価を加味して意見の重み付けをすることにより、特定の分野で専門性を発揮した人々の意見に対してより大きな信用度を与える機能もある。

 こういった評価ベースのアイデアのランキング方式であれば、Starbucksが「MyStarbucksIdea」サービスで直面した問題を防げたかもしれない。

 StarbucksがSalesforce Ideasを利用して同サービスを立ち上げ、顧客ベースを対話システムに組み込んだとき、同社は何が出てくるのか見当も付かなかったという。Starbucksブランドが従来型店舗の世界で大きな成功を収めたのは確かだが、オンラインでの実績は皆無に等しい。

 MyStarbucksIdeaはその立ち上げ以来、コミュニティーの積極的な参加を促した。同サイトには数字が示されていないが、6月初めの時点で4137ページにわたるアイデアが登録されており(1ページに付き10件のアイデア)、アイデア総数は4万件以上に達する。

 しかしその中身はといえば、生産的な提案よりも雑音の方が多いようだ。

 mystarbucksblog.comのブロガーの一人は、同じアイデアの重複、アイデアに反対票を投じる機能の欠落、ディスカッション全般の質的低下といった問題点を指摘している。

 「コメントの内容は“スーパーマンとフラッシュ(訳注:アメリカンコミックの主人公)はどちらが速いか”といった小学生レベルの議論にまで低下した。チップに関する投稿では、少なからぬ人々が実に卑劣なコメントをした。チップびんを除去するのは良いアイデアだとは思えないが、MyStarbucksIdeaのコンセプトはすべての意見に敬意をもって耳を傾けることにある」と同ブロガーは記している。

 Spigitなどのベンダーのソリューションは、こういった問題を軽減してくれるかもしれないが、総合的なソリューションを実現するのに多数の独立した製品をつなぎ合わせようと考える企業のITマネジャーは少ない。ITプロフェッショナルたちは、異種製品の購入が実装コストの増加につながるケースが多いことを知っているのだ。

 Salesforce.comの顧客企業でSalesforce Ideasを検討中のRiskMetricsでプロセス管理責任者を務めるポール・シュミッター氏は「フォーラムソフトウェアやアイデア作成ソフトウェアを別々に購入することはできるが、どれも異なる認証システムを採用しており、それが大きな障害となっている。社内あるいは社外コミュニティーを構築するのにログインしなければならないシステムの種類が多ければ、それだけ障害が大きくなる」と話している。

顧客を無視する

 企業はSalesforce Ideasなどのアプリケーションが提供するメリットを無視すべきではないが、顧客を無視しなければならない場合もある。

 CRM 2.0は、企業が顧客および従業員を効果的にまとめることにより、販売前および販売後のプロセスを大幅に効率化することを可能にする。また、顧客との密接なつながりを維持するのにも役立つ。しかし、顧客からのフィードバックを企業のミッションに整合させるにはどうすればいいのかという難しい問題もある。

 チップ・ヒース氏とダン・ヒース氏は共著「Made to Stick」の中で、Southwest Airlinesの共同創業者であるハーブ・ケレハー氏による企業経営に関するアドバイスを紹介している。

 「マーケティング部門のトレーシーがわたしのオフィスに入ってきて、“調査の結果、ヒューストンからラスベガスへのフライトの乗客は軽食を望んでいるようだ”と言った」というケレハー氏の話が同書で引用されている。「そのフライトではピーナッツしか出していないのだが、彼女はチキンシーザーサラダが喜ばれると考えている。わたしはこう言った――“トレーシー、チキンシーザーサラダを出してヒューストンからラスベガスへの低価格路線を維持できるだろうか? われわれが他社の追随を許さない低運賃航空会社になるのに貢献するのでないかぎり、絶対にチキンサラダなんか出したりはしない”」(同書)

 顧客の関心事と企業のミッションとの間でバランスを図ることは、顧客がもともと何を望んでいるのかを知るのと同じくらい重要なのかもしれない。

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