オフショア開発第三の地にベトナムが浮上日本人に似た真面目な国民性(2/3 ページ)

» 2008年06月24日 15時39分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 1年の教育期間を終え、開発が始まった。たっぷりと教育期間を取ってサイボウズの考え方を学んでもらったことが功を奏し、開発は滞りなく進んだ。新製品の開発に4カ月、テストに5カ月を費やした。試験の期間が製造期間よりも長いのが「サイボウズ独自の開発の特徴」と佐藤氏は胸を張る。

 テストに加え、ガルーン 2に実装する機能の開発も任せた。試験という単調な仕事だけでは飽きがくるからだ。「作っているものが分からなかったり、製品の一部だったりすると、仕事の全体像が見えなくなり、不満が出る」(佐藤氏)。開発に熱意を向けるエンジニアのモチベーション管理も大きな仕事だ。

 ベトナムで開発に着手してから2年の歳月を経て、ガルーン 2はリリースされた。製品の完成は成功の1つだが、新たな開発拠点ができたことが大きかった。「最初は与えられたものをこなすだけだった現場が、プロジェクトが進むにつれて、自分たちで何かを開発するという意欲で溢れるようになった」(同氏)

 外注費やテストの費用などを含めて費用は3分の1に下がった。今後は積極的に新製品の開発に取り組み、「ベトナム発の製品も何年後かには出したい」と意気込む。

image ベトナム人による開発で生まれた新機能の「リマインダー」。佐藤氏は「さまざまなアイデアがベトナム人から出てきた。こちらが期待していた以上の仕上がりになった」と満足げ

メンバーの流出防止がオフショア成功の秘訣

 ベトナムでのオフショア開発の成功の秘訣はどこにあったのか。

 佐藤氏は「メンバーが変わっていないこと」を強調する。長期期間のプロジェクトでは人材の流出が頻繁に起こる。だが、サイボウズは同プロジェクトにおいて、メンバーの変更は1人もなかった。

 「サイボウズが面白い製品を作っていると感じたから、彼らは開発を続けたいと言ってくれた」と佐藤氏は振り返る。同社とベトナムのエンジニアのコミュニケーションを仲介するブリッジSEは、教育期間の約半分の半年を現地で過ごした。時には現場で、時には飲みの場で、「サイボウズが考える開発」について何度も共有を図ったことが結果となって現れた。

 「中途半端な気持ちじゃ開発者はついてこない。絶対に開発を成功させるという覚悟を持ち、それをエンジニアに伝えないとベトナムでのオフショア開発は成功しない」(佐藤氏)

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