「見える化」で萎縮? チーム活性化の秘術――シャドーワークの効用職場活性化術講座(1/2 ページ)

クリエイティブな仕事を部下に求めるなら、「目に見える世界の仕事観」だけで管理し、安心していてはいけない。

» 2008年06月25日 08時48分 公開
[徳岡晃一郎,ITmedia]

安心感だけで部下の管理をしていないか

 前回までは職場を活性化するための効果的なコミュニケーションの戦略について考えてきたが、今回は「シャドーワーク」なる概念を取り上げてみよう。

 さて、普段私たちは仕事をする際に、どのように自分、あるいは自分の仕事を位置づけているだろうか? 自分の役割、職責、自部門の課題、やらなくてはいけないこと…。私たちは自分の責任を強く意識して仕事をしている。また管理職として、部下に「何を求めるか」を意識し、部下がきちんとそれをやってくれているか、非常に気になる。

 このように私たちは、周りからの期待の中で自分の行動や自分の仕事を位置づけたり、また部下の行動や仕事を管理しているわけだ。これは組織としては当たり前のことなのだが、それが高じると、自分の仕事を自分の意志で決められないようになって行く。上司から期待されていること。言われていること。部として決まったこと。会社の方針…。このような制約の中で、監視されている世界=「目に見える世界」が構築され、その前提条件の下でそれらをこなしていくことが仕事になっていくわけだ。

 また、管理者としては、そのように部下に仕事を命じ、どうやっているかを管理し、指標を「見える化」して、初めて安心できるようになる。

 このように、われわれは仕事を目に見える世界に引き寄せ、明示的なルールの下で従順に振る舞い、またコントロールしているのが一般的なのだ。これを「目に見える世界の仕事観」という。しかし、世の中はそう単純にすむものではないし、言われたことだけやっていればできるような仕事ではとてもクリエイティブな成果は出てこない。

別のルールを作り出し適用する

 なぜならば、私たちは仕事外での勉強をしているし、オフでの社外の人との情報交換もある。休日に新しいショップを見ながら、最新の動向を探りに行ったりするのも自然な行動だ。また、たとえ決まった仕事であっても、何か新しいしかけを考えたり、今までとまったく違ったアプローチを検討してみる衝動に駆られることもある。そして上司が考えてもいないような成果を狙う場合もある。

 そんな場合は往々にして、会社のルールが旧態依然としていて邪魔になったり、一緒にやってほしい部署が保守的で動いてくれなかったりもする。「組織の壁」が立ちはだかって、目に見える世界に私たちを引き戻そうとする組織力学が働くわけだ。それを突破するには、目に見える世界でまっとうに粛々と仕事をするためのルールとは違うルールを持ちこんで、裏工作で根回しをしたり、トップに直談判して流会をもらってしまうなどの離れ業も必要となる。

 このように、仕事は一見、組織のルール通り、上司の言うとおりやるべきものに思えるが、実はいい仕事をしようと思うと、今述べたように「組織の外の視点」が重要で、組織の既存のお作法の外で活動をしないと、結構窮屈であったりするわけだ。また、そうした動きをやることで、見える世界に従順な他の社員たちと一味違った自分の持ち味や自分なりの仕事へのポリシーが鍛えられる。このように、組織や上司によって決められたものではないことを、自分の自発的な意志に基づいて、組織のルールからはみ出してでも実行していくことを「シャドーワーク」という。目に見える世界の仕事ぶりとは対照的な動きであり、「目に見えない世界」の仕事ぶりという意味合いが込められている。

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