IT業界の仕組みと流れ――売上編ビジュアルなグラフで理解(2/2 ページ)

» 2008年07月14日 17時00分 公開
[イノウ業界研究会,ITmedia]
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金融業界は大きな会社しか相手にしない?

江水 パッケージソフトは外資系が強いですからね。どうして日本人は海外ブランドに弱いのでしょう……。ウチのパッケージソフトも、関係会社にしか買ってもらえないし。とはいえ、医薬品業界向けのパッケージは健闘していますけど。

冠里 それは、日本の医療制度は欧米のそれと異なりますから、海外の医薬品業界向けパッケージソフトをそのまま持ってきても使えませんしね。この機会に顧客企業別の売上も見てみましょう。わたしたちがどのようなユーザーを相手にしているのか、良く分かりますよ。

2006年度のIT業界における取引先業界別売上(画像クリックで原寸表示)

江水 情報化投資に積極的なのは、製造業界と金融業界ですね。

冠里 製造分野は日本の基幹産業ですからね。あと、IT業界自体も情報化投資に積極的ですよ。

江水 でも、自社内へのシステム導入プロジェクトって、失敗話も多く聞きますよね……。

冠里 残念ながら、そうですね。困ったことにIT企業だからといって、システム導入への理解を得やすいというわけではないようです……。それはさておき、業界としての売上規模は大きいにも関わらず、わが社は金融業界とあまりお付き合いがありません。なぜだか分かりますか?

江水 いや、分かりません。

冠里 では、次のグラフを確認してみましょう。

2006年度のIT業界における取引先(金融・保険)規模別売上(画像クリックで原寸表示)

江水 うわ、社員が500人以上いる企業が多いですね。

冠里 開発規模が大きくて、ミッションクリティカルなシステムが求められる金融系の案件は、規模の小さなITベンダーは受注しにくいのです。しかもプロジェクトが失敗したら、莫大な損害賠償を請求される可能性もありますし。

江水 そういえば最近、銀行が大手ベンダーを訴えた訴訟、ありましたね。

江水 ところで、冠里さんのお話はとても勉強になるのですが、そろそろ業務に戻りますね。期末は開発案件が立て込んじゃって……。

冠里 それも良い題材ですね。「3月と9月が忙しい」というのも、きちんとデータに出ています。

2007年度のIT業界(受託ソフトウェア開発)における月別売上(画像クリックで原寸表示)

江水 本当だ! でも冠里さん、そろそろ自分は仕事に戻らないと……。

冠里 ITの調達予算というものは、事前に確定させることが難しいのです。だからユーザー企業は、期末なると一気に予算を消化しようとします。それで3月や9月に忙しくなるのですね。

江水 お話はよく分かりました。これ以上席を外していると本当にマズいので、もう行きますね……!

冠里 そうですね。わたしたちのような受託開発系企業は、お客様があってこそですからね。でも運用保守の受託は、開発ほどは月に左右されません。次のグラフに示されるとおり、あまり変化がないでしょ。だから、運用保守の仕事も重要なのです。

2007年度のIT業界(システム等管理運用受託)における月別売上(画像クリックで原寸表示)

江水 すみません、また今度! (走って逃げる江水君)

冠里 まったく。せっかく、ためになる話をしているのに……。

著者紹介

イノウ業界研究会 業界、会社、仕事のことを、「動く図表」「リアルなキャラ」「MECEな文章」を使い、ウェブと書籍の連動で「分かりやすく」解説することを目指しています。IT業界については、ウェブの『IT業界の「しくみ」と「ながれ」』(こちらのサイトでは「動くグラフ」が稼働中)と書籍の『世界一わかりやすいIT業界の「しくみ」と「ながれ」』でサービスを提供中。


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※本連載は、@IT自分戦略研究所と共同企画でお届けしています。



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