江水 パッケージソフトは外資系が強いですからね。どうして日本人は海外ブランドに弱いのでしょう……。ウチのパッケージソフトも、関係会社にしか買ってもらえないし。とはいえ、医薬品業界向けのパッケージは健闘していますけど。
冠里 それは、日本の医療制度は欧米のそれと異なりますから、海外の医薬品業界向けパッケージソフトをそのまま持ってきても使えませんしね。この機会に顧客企業別の売上も見てみましょう。わたしたちがどのようなユーザーを相手にしているのか、良く分かりますよ。
江水 情報化投資に積極的なのは、製造業界と金融業界ですね。
冠里 製造分野は日本の基幹産業ですからね。あと、IT業界自体も情報化投資に積極的ですよ。
江水 でも、自社内へのシステム導入プロジェクトって、失敗話も多く聞きますよね……。
冠里 残念ながら、そうですね。困ったことにIT企業だからといって、システム導入への理解を得やすいというわけではないようです……。それはさておき、業界としての売上規模は大きいにも関わらず、わが社は金融業界とあまりお付き合いがありません。なぜだか分かりますか?
江水 いや、分かりません。
冠里 では、次のグラフを確認してみましょう。
江水 うわ、社員が500人以上いる企業が多いですね。
冠里 開発規模が大きくて、ミッションクリティカルなシステムが求められる金融系の案件は、規模の小さなITベンダーは受注しにくいのです。しかもプロジェクトが失敗したら、莫大な損害賠償を請求される可能性もありますし。
江水 そういえば最近、銀行が大手ベンダーを訴えた訴訟、ありましたね。
江水 ところで、冠里さんのお話はとても勉強になるのですが、そろそろ業務に戻りますね。期末は開発案件が立て込んじゃって……。
冠里 それも良い題材ですね。「3月と9月が忙しい」というのも、きちんとデータに出ています。
江水 本当だ! でも冠里さん、そろそろ自分は仕事に戻らないと……。
冠里 ITの調達予算というものは、事前に確定させることが難しいのです。だからユーザー企業は、期末なると一気に予算を消化しようとします。それで3月や9月に忙しくなるのですね。
江水 お話はよく分かりました。これ以上席を外していると本当にマズいので、もう行きますね……!
冠里 そうですね。わたしたちのような受託開発系企業は、お客様があってこそですからね。でも運用保守の受託は、開発ほどは月に左右されません。次のグラフに示されるとおり、あまり変化がないでしょ。だから、運用保守の仕事も重要なのです。
江水 すみません、また今度! (走って逃げる江水君)
冠里 まったく。せっかく、ためになる話をしているのに……。
著者紹介
イノウ業界研究会 業界、会社、仕事のことを、「動く図表」「リアルなキャラ」「MECEな文章」を使い、ウェブと書籍の連動で「分かりやすく」解説することを目指しています。IT業界については、ウェブの『IT業界の「しくみ」と「ながれ」』(こちらのサイトでは「動くグラフ」が稼働中)と書籍の『世界一わかりやすいIT業界の「しくみ」と「ながれ」』でサービスを提供中。
『世界一わかりやすい IT(情報システム)業界の「しくみ」と「ながれ」』(amazonへのリンク) イノウ業界研究会編著
江水くん、冠里さんをはじめとするキャラクターが解説する業界の「入門書」。IT業界を「分かる」ために必要な「業界の知識」「会社の知識」「業務の知識」「基本の知識」を提供。
※本連載は、@IT自分戦略研究所と共同企画でお届けしています。
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