〔悪い管理者・田中和男〕は、A社のオフィス移転に伴い無線LANを導入することにした。和男はA社のシステムを構築した経験からプログラミングには少々自信があるが、無線LANは初めてである。
いったん決めたら、いてもたってもいられない。無線LANの関連機材を買ってきて試行錯誤を始めた。少々値は張ったが、どうせ会社の経費だから問題はない。さっそく、無線LANを設定してみることにした。
「SSIDビーコンって何だ? SSIDビーコンをオフにするのも面倒だ。そんなことしたら、あらかじめユーザーにSSIDを教えなければならないじゃないか。SSIDをオンにしていても、すぐにクラッキングされることはないだろう」
「念のためにMACアドレスをアクセスポイントに登録しておけば大丈夫だろう。ネットワークカードのドライバによっては、MACアドレスを手動で設定できる機種もあるそうだが、そう簡単にMACアドレスまで見つけられはしない。あれっ、レンタルしているPCはMACアドレスが毎回違う。それに、返却のときにアクセスポイントからMACアドレスを消さなければならないかもしれない。面倒だから、アクセスポイントにMACアドレスを登録するのはやっぱりやめることにしよう」
「WEPキーも無しでいい。WEPキーは脆弱性が指摘されているから、WEPキーの設定自体にあまり意味がないし。余計な手間をかけずに、ユーザーが使いやすい環境をスピーディーに構築するのが一番会社のためになる」
そんなことをしているうちに、近くのアクセスポイントとチャネルがバッティングしていることが分かった。バッティングしていると、無線LANが安定しないのだ。
「アンテナを改造してもっと出力を高めることにしよう。バッティングしている所よりも、大出力で電波を発信すれば混信してもウチが勝つだろう」
和男は、認定機器を許可なく改造することが電波法違反になることを知らなかった。
電話が鳴った。警察からだった。A社のIPアドレスを使って、誰かがウイルスをまいているらしかった。和男は、顔から血の気が引いていくのが自分でも分かった……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.