携帯Web分野でも世界から無視される日本Next Wave(3/3 ページ)

» 2008年07月17日 13時49分 公開
[幾留浩一郎,ITmedia]
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機能、デザインとも好評の日本の携帯端末

 最近読んだ米国のIT雑誌で面白い記事があったので紹介したい。「世界で一番沢山売れているデジカメのメーカーはどこでしょう? それから世界で一番たくさん売れている音楽プレーヤーのメーカーはどこでしょう?この2つの質問の答えが分かりますか」というもの。業界通の方なら、それぞれキヤノンとアップルと答えるのではないだろうか。

 しかしここでの正解は両方とも「NOKIA」である。携帯端末は多機能化しデジカメや音楽プレーヤー機能も内蔵している。つまりカメラでもあり音楽プレーヤーでもある携帯電話は、世界市場で桁違いの台数が売れているのである。

 町中の電気店の一番目立つ場所に新しい携帯機があふれている。日本国内だけでも多くのメーカーが大きな設備投資をし、膨大な数の携帯電話が生産されていることは誰もが知っていると思う。しかし世界に目を向けると、日本の携帯電話メーカーのトップ5社の生産台数を合計してもNOKIA1社の生産数にも届かないことはご存知だろうか。

 かつて日本は小型家電分野で圧倒的な競争力があった。携帯電話のような小型で高性能な製品は日本が最も得意とするお家芸ではなかったのだろうか。実際、日本の携帯端末は機能やデザインで優れているものが多いと思う。私も時々米国の友人達に日本の携帯電話を見せると非常に興味を持ち機能を賞賛するので、新機種はいつも話題の種になるくらいだ。

世界標準を作れるのか?

 しかしながら世界市場では、日本のメーカーのシェアは驚く程低い。米国内の携帯屋さんでも、日本のメーカーの機種は最近ほとんど目にしなくなった。以前は若干見かけたのだが、米国市場からみんな撤退してしまったように思えるぐらいだ。また欧州や中国インドでの携帯市場統計を見ても市場シェアは非常に低い。どうもこの分野では日本のメーカーは世界から孤立してしまっているように見える。

 携帯電話に関してはキャリア主導で動かざるをえないという日本の事情によるのだろうか。日本のキャリア仕様で作ったものは世界では売れず世界市場では効率が悪いのであろうか。国内だけで儲かるビジネスができているからOKなのかもしれないが、現在の台数で言えば、日本国内市場は世界市場全体のほんの1/33に過ぎないのである。

 家庭用ビデオなど家電分野で、日本のメーカーはかつて世界標準を作ってきた実績がある。しかしながら、似たような技術分野であるにも関わらずIT分野は、驚くほど遅れている。私は以前からそのアンバランスが不思議で仕方なかったが、その遅れの実態はこれまでほとんどの日本人が認識していなかった。ただ最近は、日本のマスコミも日本のことを「IT後進国」と表現してはばからなくなってきたので、その現状や将来に危機感を持つ人が増えてきたのかもしれない。

 携帯Webに関連した様々なビジネス分野で、世界規模の発展が始まろうとしている。日本はその利用では今は世界の最先端にあるが、その独自性のため近い将来、逆に世界から取り残されてしまう恐れはある。しかし、多くの課題はあるものの、携帯WebはIT分野で日本発の世界標準を作れる千載一遇のチャンスでもある。世界に目を向けた攻めの戦略が必要な時ではないかと思う。

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プロフィール

いくどめ・こういちろう AuriQ Systems, Inc. (カリフォルニア州パサデナ) CEO 兼オーリック・システムズ株式会社 社長。リアルタイムWebアクセス解析システム「RTmetrics」の開発元。米国と日本のIT産業において25年のビジネス経験を持つ。


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