CRMの新潮流

「CRM2.0」はバズワードか――SaaSがもたらす新シナリオCRMの新潮流(1/2 ページ)

2007年からCRM市場成長率が再び2ケタ台に達している。ネットバブル以来のCRMの第2次ブームといえる。なぜ、ここに来てCRMが再注目されてきているのか。

» 2008年08月19日 09時18分 公開
[岩上由高(ノークリサーチ),ITmedia]

この記事はオンライン・ムックCRMの新潮流のコンテンツです。


はじめに

 2007年からCRM市場成長率が再び2ケタ台に達している。これは1990年代後半〜2000年のインターネットバブル期におけるCRM第一次ブームに匹敵する数字である。なぜ、ここに来てCRMが再注目されてきているのか。1つにはSaaS型CRMの急成長が挙げられる。しかし、SaaSで提供されているアプリケーションはCRMだけではない。CRMとSaaSを結びつけ、昨今の高い成長率をもたらしている要因の1つが「CRM2.0」と呼ぶ新しい形態のCRMの登場である。本連載では「CRM2.0」の実態を明らかにし、事例も交えながらCRMの将来像に迫る。

 それでは早速、CRM2.0とは何かについて見ていくことにしよう。

従来型CRMの問題点とその解決

 CRMの役割には大きく分けて以下の3つが存在する。

  • 顧客
  • 営業
  • 管理/マーケティング

 初期のCRMでは、顧客が入力したプロフィール情報や営業が入力した活動報告を管理やマーケティング部門が利用するケースが多くを占めていた。管理やマーケティング部門のために顧客と営業がデータを蓄積する構図である。この方法の問題は、顧客や営業にデータ入力という負担を強いていることであった。

 顧客にとってみれば、一生懸命プロフィール情報を入力しても、それに見合うだけのサービスが受けられない。営業からすれば、忙しい最中にせっせと日報を書いても上司からのフィードバックがない。次第にデータ入力に対するモチベーションが下がり、結果的に分析に足りるだけのデータが蓄積されず、管理やマーケティング部門も利用しなくなってしまう。CRMにおいては「データ入力の手間」が大きな課題だったのである。

従来型CRMの課題

 一方でインターネットの世界では、ユーザーの利便性を改善する仕組みが次々と生み出されていった。単なる購買履歴ではなく、どんな商品を閲覧したかといったユーザーの詳細な行動履歴を元に商品を薦める「レコメンデーション」や、既にインターネット上に存在するコンテンツを自身のコンテンツに組み入れる「マッシュアップ」などである。

 顧客にプロフィールを入力させる代わりに、実際の行動履歴を元にしたデータを蓄積すれば、顧客のその時々の嗜好をより正確に反映できる。顧客にとっては、余計なデータ入力の手間が省ける上に、自身の好みに合った商品を紹介してくれるというメリットがある。

 営業に取引先のさまざまなデータを手入力させる代わりに、既にインターネット上に存在するWebサイトやブログに書かれた情報を引用すれば手入力の手間が省ける。日報に手入力された取引先の業績情報は入力した瞬間から陳腐化してしまうが、マッシュアップであれば常に最新の情報を参照することができる。

 このように「インターネット上のWebサイトで培われた技術を活用した新しい形態のCRM」のことを「CRM2.0」と呼ぶ。企業内の情報システムにブログやWiki、SNSといったインターネットで不特定多数が利用している技術を取り込もうとする動きを「Enterprise2.0」と呼ぶが、CRM2.0もそうした一連の流れの1つと捉えられるだろう。

 上記の定義では少々漠然とし過ぎているので、もう少しCRM2.0の中身を詳しく見ることにしよう。CRM2.0を特徴付ける要素には大きく分けて次の3つが存在する。

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