CRMの新潮流

同業数社が在庫ネットワークで街ぐるみCRMをCRMの新潮流(1/2 ページ)

書店にとって来店客は「ウチの客」であるばかりではなく、その界隈を訪れた「街の客」でもある。そんな顧客を「また来よう」と思わせる秘策とは――。

» 2008年08月22日 19時02分 公開
[ITmedia]

この記事はオンライン・ムックCRMの新潮流のコンテンツです。


在庫情報ネットワークがもたらす変革

 CRMは自社の顧客との関係構築に使われるものだが、業界や店舗のある街全体の発展に寄与するといった大きな目標にも活用されることがある。CRMの本来のテーマを広げてITを利用することで、自社ブランドの認知度や来店者数をアップさせることも狙えるわけだ。

 近年、書店業界は店舗の大型化が進み、激しい競争が繰り広げられている。しかし、新刊書店は書籍、雑誌について安売り攻勢をかけ、価格戦略で勝負するわけにもいかず、豊富な品揃えと店舗の立地で差別化するしかない。ただ、そうした差別化は決定的なアドバンテージをつけることはできない。国内の出版物の販売額は年々減少傾向にあり、外部環境が悪化する中でどのようにビジネスを発展させていくか、こうした大きなテーマを書店業界は背負っている。

 三省堂書店は、1881(明治14)年創業の老舗書店である。国内に36店舗を擁し、多くの読書家から親しまれている。同社は同業他社と比較しても、早期にITに対する取り組みを手掛けており、今では多くの書店で当たり前のように設置されている、在庫確認用の検索端末などの導入を先駆けて行っている。

 完全なリアルタイムではないものの、同書店の各店舗では、最新の在庫状況が確認できるわけだが、ユニークなのは、こうした情報をさらに拡大し、販売情報も加えて、契約した出版社などに情報提供を行っている。いくつかのオプションがあるものの、中小企業でも手の届く価格帯でのサービスだ。

 これによって、出版社は三省堂全店の自社刊行物の販売状況、在庫情報を確認することができる。このサービスは同業の書店も契約することができ、東京の神保町などをはじめとする各地の「本の街」の発展にも寄与すると期待されている。現在、神保町の複数の書店が三省堂のシステムを利用して、在庫情報の共有を進めている。

 このネットワークを利用して、来店客は複数の書店の在庫確認を一度の端末操作で行えるようになる。例えば三省堂の端末で欲しい本の在庫を調べると、ネットワークを利用している他の書店の在庫も同時に確認ができるわけだ。「この本、どうしても今手に入れたい」読書家の多くは読みたい本が見つかると、できるだけ早く購入したくなるものだ。

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