ITマネジャーにとって、リーダーシップという言葉はいつも意識する単語の1つだろう。しかし疲弊しつつある、あるいは疲弊しきってしまっている組織やチームをどう変えていくかという問題の解はそう簡単には出てこない。
最近、リーダーシップ・コミュニケーションという言葉が聞かれるようになってきた。
どんなにビジョンや戦略がパーフェクトに立案されても、その内容が実行する社員たち1人ひとりにきちんと共有され、モチベートされなければ何の意味もない。カルロス・ゴーン氏(日産とルノーのCEO)が、「企画(戦略や企画書など)は成功の5%であり、実行が95%を握る」という名言を日産リバイバルプランを発表するときに、語ったのは有名な話だ。
95%を握る「実行」とは一体なんなのか。
リーダーにとって実行とは、正にコミュニケーションなのだ。ゴーン氏が、NRPのすべてに手を出し、いちいち采配を振るうようなことはとてもできない。リーダーは、それを任せる人々に、本当にコミットしてもらうしかないのだ。サッカーでも野球でも、スポーツの世界を見ればよく分かる。いざ試合が始まってしまえば、後は選手の日頃の練習の成果を見守るしかない。ビジネスの世界では、時間制限がない(比較的ゆるい)ことと課題にも小さいものも多いゆえに、リーダーでもどんどん手を出してしまうが、真に大きな変革やプロジェクトをこなそうと思ったら、やはり多くの部下やメンバーに思う存分動いてもらうしかない。
それゆえ、ゴーン氏の95%は実行にかかっている、というその95%の部分で一体、ゴーン氏自身が何をするかといえば、基本的にはコミュニケーションに費やすしかないのである。そして95%と言えば、ゴーン氏の手法を見れば分かるとおり、とにかくあの手この手だ。強烈な発信もあれば、フェイス・トゥ・フェイスでの対話もある。現場を回ることもあれば、メールでの一斉配信もある。
こうした活発なコミュニケーションは、ジャック・ウェルチやジェフ・イメルトらGEのトップたちが、自分たちリーダーの役目の30%以上は社員たちのモチベーションだと言っていることとも符合する。また、ゼロックスのCEOのアン・マルケイヒーはトップの仕事は、社員へのコミュニケーションを徹底して、会社をあるべき方向へ向けることだとし、自らを「Chief Communication Officer(CCO)」と称している。
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