MSがモデリング戦略を策定――OMGにも参加(2/2 ページ)

» 2008年09月12日 07時00分 公開
[Darryl K. Taft,eWEEK]
eWEEK
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プラットフォームの中核要素となるモデリング

 モデリングはMicrosoftの「Dynamic IT」戦略の中核となる。同戦略は、企業のIT/開発部門がビジネスで戦略的な役割を果たすことを可能にする技術、サービス、ベストプラクティスを顧客に提供するという長期的なアプローチである。

 Microsoftによると、モデリングの可能性は何十年も前から注目されていたが、企業がコアアプリケーションを開発・運用する方法に大きなインパクトを与えることができなかったという。また、モデルはソフトウェアシステムを定義する静的なダイアグラムを超えるものに進化しなければならない、と同社は指摘する。それは組織図やキャッシュフローダイアグラムなど、ビジネスを日々検討する上でコアとなる要素だとしている。

 Microsoftはモデル駆動型開発を現実のものとすべく、モデル駆動型プラットフォームとビジュアルモデリングツールを提供することにフォーカスしている。このプラットフォームおよびツールは、情報ワーカー、開発者、データベースアーキテクト、ビジネスアナリスト、ITプロフェッショナルなどすべての「メインストリーム」ユーザーが、アプリケーション開発ライフサイクルを通じてコラボレートすることを容易にする。モデル駆動技術をMicrosoft .NETプラットフォームに直接統合することにより、企業はエンドツーエンドでアプリケーションに対する可視性とコントロールを手に入れるという。

 「われわれは、モデリングを.NETプラットフォームの中核として組み込もうとしている」とマグリア氏は発表文で述べている。「これにより、ITプロフェッショナルはビジネスニーズを指定し、これらの指定から直接動作するアプリケーションを開発できるようになる。これは、ITライフサイクルのさまざまな段階を統合することにもなる。すなわち、要件を指定するビジネスアナリスト、ソリューションを設計するシステムアーキテクト、アプリケーションを作成する開発者、アプリケーションの配備・保守管理を行う運用担当者を結び付けるのである。要するに、ITプロフェッショナルがイノベーションを進め、ビジネスニーズに迅速に対応できるようになるということだ」

 OMGのリチャード・マーク・ソーリーCEOは、eWEEKの取材で次のように語った。

 「1997年にUMLを採択し、2001年にModel Driven Architectureを導入して以来、OMGはUMLなどのモデリング言語を、電子決済の相互運用性、医療記録の相互運用性、宇宙システムの連携、損害保険システムなど多数の個別業界の問題に適用して成果を上げてきた。Microsoftがこれらの個別業界向けの取り組みの幾つかに参加し、彼らの深く幅広い専門知識と彼らのマーケットプレゼンスを通じて協力することを決めたことを、わたしはこの上なく喜んでいる。ソフトウェア開発者は、UMLなどのモデリングインフラにおける共通の標準化されたソリューションを求めているだけでなく、バーチカル市場でも、選択肢の拡大とコストの削減のためにソリューションの標準化を求めている。Microsoftは多くの分野で世界トップレベルのモデリング専門家チームを抱えており、われわれは彼らをOMGの主要メンバーとして歓迎する」

 MicrosoftはOMGに参加するだけでなく、幾つかのOMGワーキンググループで積極的な役割を果たし、業界内でのオープンな対話促進に貢献するとともに、主要な顧客ニーズに対応するための標準の開発に協力する考えだ。既にMicrosoftは、損害保険業界に関連した保険業務の情報モデルを開発する金融ワーキンググループと共同作業を行っている。同社は将来的に、これらのモデルを拡張し、ほかの分野にも応用できるようにする予定だ。同社が当初フォーカスするもう1つの取り組みは、各種の決済メッセージング標準の間でメッセージングを変換するための規格の開発である。

 Microsoftによると、「Extensible Application Markup Language」(XAML)やASP.NET MVCなどのイノベーションを利用すれば、開発者は今日からでも、モデル駆動型アプローチの導入を始めることができるという。XAMLは、「Windows Presentation Foundation」(WPF)および「Windows Workflow Foundation」(WCF)のベースにある宣言型モデル。ASP.NET MVCは、モデル駆動開発を.NET Frameworkに統合し、Webアプリケーション用の「モデル・ビュー・コントローラ」(MVC)の実装を容易にする。Microsoftによると、XAMLとASP.NET MVCは、.NETアプリケーションの実際のランタイム動作を駆動するモデルの例だという。これらは、接続型プラットフォームモデリングを提供することを目指したMicrosoftの広範な全社的取り組みの一部となるもの。このモデルには、「Oslo」およびVisual Studio「Rosario」構想を通じて提供される技術も含まれる。

 MicrosoftがOMGとのかつての確執を乗り越え、同組織に協力するというのは喜ばしいことだ。

 MicrosoftのCSD部門のパートナーアーキテクト、ドン・ボックス氏は1999年の論文で次のように述べている(同氏は当時、共同創業者として設立したDevelopMentorにまだ在籍していた)。「皮肉なことに、MicrosoftとOMGが、DCOM(Distributed Component Object Model)とCORBAのどちらでインターネットを運用すべきかと論争している間に、HTTP(Hypertext Transfer Protocol)が支配的なインターネットプロトコルとしての地位を確立した」

 さらに、ボックス氏は説得力のある意見を述べている。

 「結局、コンポーネント技術の主要な機能は、複数のソフトウェアをつなぎ合わせる接着剤としての役割を果たすことである。これはCOMにもJavaにもCORBAにも当てはまる。これら3つの技術はいずれも、別個の組織が作成したソフトウェアコンポーネントを連携するためのインフラを提供する。1万フィートの上空から眺めれば、これら3つの技術はだいたい同じだ。しかし近寄って見れば、それぞれの技術は根本的に異なる手法とプログラミングスタイルを用いて、その目的を達成しようとしている」

 MicrosoftのOMGへの参加は、モデリングへの支持拡大に向けたMicrosoftの計画にとってプラスになるだけではなく、ビル・ゲイツ氏がやり残した課題にもつながる。モデリングは、ゲイツ氏お気に入りのプロジェクトの1つだったのだ。

 Microsoftは、アイバー・ジェイコブソン氏やグレイディー・ブーチ氏(両氏はUMLの共同開発者)といったUML分野のリーダーたちの関心も引こうとしている。ジェイコブソン氏は、Microsoft Solutions Frameworkへの支持を表明した。また情報筋によると、Microsoftは二度にわたり、ブーチ氏を雇い入れようとしたようだ。一度目はゲイツ氏が直々にIBMフェローのブーチ氏に声を掛けた。そして二度目はゲイツ氏が6月末に引退した後である。

 Microsoftはかつて、DSL(Domain Specific Languages:ドメイン固有言語)を中心としたモデリング戦略を重視し、UMLに消極的だったことがある。今回の動きでMicrosoftがDSLを放棄し、UMLを支持するということではないが、UMLに対する大きな需要をMicrosoftは無視するわけにはいかないようだ。CSD部門のMicrosoft技術フェロー、ブラッド・ラバリング氏によると、顧客のニーズが高いため、OsloではUMLをサポートする予定だという。調査会社Forresterの推定では、ソフトウェアモデリングを行っている開発現場の71%でUMLが利用されている。

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