OracleのエリソンCEO、「クラウドコンピューティング騒ぎ」をこき下ろす(1/2 ページ)

データベース帝国を築いた後でエンタープライズアプリケーションの攻略を開始したOracleのラリー・エリソンCEOは、Oracle OpenWorldで「クラウドコンピューティングをめぐる騒ぎはハイプにすぎない」と批判した。

» 2008年10月01日 08時48分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 Oracleのラリー・エリソンCEOは、広い海の上でヨットレースをするのが好きかもしれない。しかし、ことクラウドコンピューティングという話題については、世界のデータベースキャプテンも洋上で針路を見失っているようだ。

 少なくとも外からはそんなふうに見えるが、メディアの連日の大騒ぎに対して同氏は親切な警告を発しているだけなのかもしれない。

 9月21〜25日に開催された「Oracle OpenWorld」で、エリソン氏はクラウドコンピューティングをめぐるマーケティング手法や宣伝文句を厳しく非難した。クラウドコンピューティングは、顧客が自分のアプリケーションやデータをベンダーのインフラ上で運用してもらい、Webを通じてアクセスするという方式。Google、Amazon Web Services、IBMなどの企業が、このモデル活用してビジネスチャンスを獲得するのに成功している。

 Wall Street Journalのベン・ワーゼン氏のブログ記事には、クラウドコンピューティングに対するエリソン氏の痛烈な批判が掲載されている。

 「クラウドコンピューティングで興味深いのは、クラウドコンピューティングという言葉が再定義され、われわれが既に行っているあらゆることが含まれるようになったことである。どんな発表を見ても、クラウドコンピューティングを標榜していないものはない。コンピュータ業界は、女性ファッション業界よりも流行志向が強い唯一の業界だ。わたしがバカなのかもしれないが、みんなが何を言っているのか理解できない。いったい何のことなのか、まったくわけが分からない。このバカ騒ぎはいつ終わるのだろうか。当社もクラウドコンピューティングの発表を行うだろう。わたしはこういったことに抵抗するつもりはない。しかしクラウドコンピューティングという点について言えば、当社の宣伝文句のほかに何が変わるのか理解できない。以上がわたしの考えだ」

 Oracleのコメントは得られなかった。エリソン氏の発言は問題だと思うが、自社のプラットフォームにクラウドという看板を付ける企業が非常に多いのは事実だ。

 当初はオンプレミス(自社運用型)ソリューションとして開発した製品をクラウドに移植している(すなわち、オンライン上に配備して顧客がアクセスできるようにしている)企業もある。こういった取り組みの背景にはマーケティングという狙いもあるが、それがすべてではない。彼らはGoogleやSalesforce.comなどの企業に注目しており、クラウドがコンピューティングの将来モデルになると考えているのだ。

 クラウドには「われわれが既に行っているあらゆること」が含まれるようになったというエリソン氏の指摘は的を射ている。われわれがクラウドと呼んでいるものの多くは、2000年ごろからこのWeb 2.0の世界の表面にクラウドという比喩が浮かび上がるまでは、グリッドコンピューティングとかユーティリティコンピューティングと呼ばれていた。ちなみに、Web 2.0も悪口をたたかれている用語だ。

 エリソン氏は「Oracleはクラウドコンピューティングに関する発表を行うだろう」と語っているが、それはOracleがマーケティングの流行についていく必要があるからだと同氏は言いたいようだ。実際、Oracleの動きは、クラウドモデルがエンタープライズコンピューティングの根本的変化の一部であることを示している。

 Oracleがクラウドモデルを採用する方針を明らかにしたのは9月22日である。顧客がOracle Database 11g、Oracle Enterprise ManagerおよびOracle Fusion Middlewareをライセンスし、Amazon.comのEC2(Elastic Compute Cloud)上で運用できるようになると発表したのだ。Oracleはさらに、クラウドコンピューティングの妹分の技術であるSaaS(サービスとしてのソフトウェア)も受け入れている。

 Pund-ITのアナリスト、チャールズ・キング氏によると、Oracleはこういった動きを通じて生き残ることを考えている可能性があるという。

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